第28章 想定外
もちろん彼に断らせるつもりないんだけど…。
呻くように、自問自答してるだろう悟のその隠した片手に触れた、そして悟の手の甲を優しく撫でる。
『ねぇ、悟…?』
「……ふー…、分かった。これはたっぷり愛さなきゃ旦那さんとしてイケナイよね?」
顔を隠すのを止め、ちょっと緩めな表情の悟。ばさっ、と布団を捲り、ちょっと考えた彼はもう一度布団をかぶり直す。うんうん、部屋の空気がちょっと寒いんだよね。
『さむーい…』
「うん。こっちはあっちの部屋と違ってずっと暖房とか出来ないしねー……布団中で脱いで密着したままえっちしようか?」
覗き込むようにして笑いながらそう提案はしてくれたのは嬉しいし、ノリが良いのは良いんだけど。ひとつだけ悟に確認をしたくて彼の顔をじっと覗き込む。
『悟は本当に私とえっちしても良いの?』
「ククッ、誘った手前なに言ってんだか!なんで?やっぱしちゃ駄目なカンジ?嫌なのに誘う謎ツンデレ?」
『謎ツンデレ……?いや、そうじゃなくって…確認?』
私は今日、ゴムをしていたとはいえ男ふたりにレイプをされた。そしてゴムのない状態で口で……。
言うのを少しためらいつつも、黙って行動して後悔はしたくないからちょっとだけ時間を開けて勇気をもって彼に聞く。今更になって「汚らわしいから本当はしたくない」とか拒絶されたらどうしよう…なんて。
『悟以外としてんだよ?コンドームしてても中に入った。悟と違って適当な扱いだったから多少は中に精液入れられたかもしれない、それでも良い…?』
……不本意だけれども。
それを聞いて彼はふっ、と不敵に笑う。
「大丈夫、オマエは浮気しないタイプだし。相手の男はふたりとも僕が殺した。あいつら雑魚だしきっと精子もよわよわだろ、孕みもしないさ。
この世に僕以外でハルカを知る男はもう居ないでしょ?だからいつもみたいに今夜もオマエと愛し合う…ただそういう事だろ?」
『それは、そうだけど……抱きたくなくならない?あんなやつらにその、』
犯されたのは分かってる。
彼だけの私を他の男に少しでも染められたという事で、その気がなくならないのか。愛せなくならないかという可能性。
怖くてもそれでも私に向けられた愛情を確かめたくて悟の顔を覗き込むと彼は優しい顔で微笑んでる。