第28章 想定外
──確かに、痛い思いや怖い思いをした。悔しかった。
悟以外を知らない私の体に無理矢理に教え込まれた、それも力尽くで。拒絶も逃げることも出来ずに受け入れなければいけない状況に恐怖した…だからといって全ての男性があの男達みたいな乱暴であるとは思わない。
私を犯したふたりは暴力を以って支配や欲を発散する為に私を襲った。私の直ぐ側にいつも居てくれる悟は彼らとは違う。行為が始まる前から優しく触れて常に愛してくれるようにしているのだって知ってるから、性行為にトラウマになるって事じゃないけど。
……とりあえずはさ。疲れたのもあるけれど、触られたり舐められたり、体液だとか全ての悟以外の男の痕跡をさっぱりと洗い流したいな。
『疲れたからさっさとシャワー浴びたいな…』
「うん……その方が良いね。今日は報告もあるしあっちに帰らず寮に泊まろうか。それならハルカも僕も別々のベッドで寝られるし」
彼の言葉が気まずそうだったから悟を見上げた。
視界の中、また気まずそうな傑も居る、こっち見てる。こういう夜に関した話題は今はするべきではない…とも思ったけれど、傑の前で盛大に痴話喧嘩をした事があった。堂々と話したし、悟に胸を揉ませたりしてたし。
……うん、大丈夫やろ、と傑を見てから悟に視線を戻す。
『……なに言ってんの。普通に一緒に寝るんじゃないの?』
驚いた顔の悟は背筋を伸ばし、片手を私に触れようとして止めて。
「は?え、でも……あんな事があったら…さ?」
言葉に詰まる彼。悟なりにも変に気を遣ってるんだなあ。そういう所があいつらと悟を分けてるんだと感じてる。思わずその優しさに笑みが出た。
『あいつらは痛くて最低最悪だったけど、悟は違うでしょ?優しく愛情ある行為じゃん。私は悟に嫌な記憶を忘れられる一歩として上書きして欲しかったんだけど……』
それも流石に身体を綺麗にしてからの話だけどね?
嫌な思い出を上書きして欲しいと口に出せば一文字に結ばれた口元。
私が良くても、彼にしちゃ他の男と交わった妻。人によっては二度と夜を一緒に出来ないってパターンもある。
……彼は後者だったのかな、それとも考える時間だとか少し日を跨ぎたいって事もあるよね。
今夜えっち出来ないのはちょっと残念かも、と真顔の悟から私は視線を地面に反らした。