第28章 想定外
「……うん。僕の事を待っててくれてありがとう。僕は絶対にハルカを守るから、どこにだって助けに行く……少し遅刻はしがちではあるけれど。
僕たちは一心同体、家族なんだから。大切な家族のハルカは絶対にこうやって守るからね?」
頭上で短く笑った声を聞いて、緊張や不安でいっぱいだった私の中にどっと安心が押し寄せる。安心したら震えも止まり緊張も解けて、筋肉も緩んだのか、ばっ、と見上げた悟が水中の中で揺らめいている。
『さ、さとるぅ~!』
「んもぉ、僕の前だけこうも泣き虫さんなんだから…、」
シャツに顔を埋める私を少しだけ力を緩めた悟が抱きしめる。優しい笑い声が押し付けた胸から心音と一緒に聞こえてもう怖い思いを我慢しなくて良いんだと思えばどんどん涙が溢れ出していく。
優しくとんとんと撫でる背中の手。その手が髪をゆっくりと撫でてその優しさに更に涙が出た。
いつまでも泣いてられないか。この続きは部屋に帰ったらにしよう、これ以上だらだらと皆を巻き込んで時間を取って、私の我儘に付き合わせて迷惑を掛けたくない。
嗚咽をあげつつ、乾ききらない目元のままで悟の胸から離れ、私は急いで脱衣所のドア近くに乱雑した靴を履いた。
「あれ、イチャイチャタイムはぁ?」
……期待してたんかい!
そうツッコミたいのを飲み込み、濡れた目元を手で拭う。
『ぐずっ、……時と場所を考えてさっさと脱出が優先、でしょ?傑さんも来てるし早く出よっ!』
「……うん。そんな元気なオマエが一番だね。ちょっと安心した。
じゃあ、無下限で飛び道具からしっかりオマエを守るから、なるべく離れないようにしててね!」
ウインクをした悟がふざけているようでとても頼もしいや。
悟と共に通路を走り、途中で傑と合流をした私達。呪術界の最強と呼ばれるコンビと私、それから高専を裏切った拘束されたヒサカイを土産に、裏社会のたまり場から私達は外へと脱出する事に成功した。