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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第28章 想定外


「一匹目の駆除、終わり。次は二匹目………フフ、なぁに?ハルカ、そんなにぎゅっとしがみついちゃってさ。くっつきすぎ、動きにくいよ?」

冷酷な声色の彼。
ただ私を呼ぶ時はいつものように少し甘い声を織り交ぜている。
いくら最強を誇る特級呪術師だとしても、非術師であるヤクザを殺すことはない。
目の前で見てしまった彼の殺人は、刺殺や毒殺などよりも酷いもの。頭を掴み、首をへし折ってもぎ取る行為を見てしまった。

『悟、殺しは駄目』

呪いは祓っても、殺しは……。彼にはそんな事をして欲しくない。私は自身でトラウマになってる、そのなかなか治ることの出来なかった思いを、後ろめたさを彼に背負って欲しくない。
見上げて視線が合ったその瞳は優しいのだけれど、そこには憎しみよりも愉快そうにも私には見える……。
にこ、と口角を上げて笑う悟。

「駄目じゃない。大体今、僕が殺したのは人間じゃないから大丈夫だよ?ハルカを傷付けたケダモノだ、キミを汚した獣…人にあらず……。
僕は今、害獣駆除をしてるんだ、そんなの呪いを祓うのと同じだろ?僕はなんとも思わないよ」
『でも、』
「さあ、はりきってケダモノを始末しなくっちゃね!」

ズルズルとしがみつく私を引きずり、悟は立ち止まる。彼の背に顔を埋めた状態で聴こえてくる生々しい肉の亀裂音はきっと、頭部と胴体が離れていく骨と筋組織が無理矢理に分離する音。

私達から少し離れた場所、左隣の方にゴト、という音を聞いて悟にしがみつきながら顔をそっちへ向けたら、黒髪を血でべっとりと濡らした首が血を撒き散らしながら転がり後頭部をこっちに向けて動きを止めた。

──ああ、悟が人を簡単にも殺してしまった……ふたりも人間を殺させてしまった。
ぎゅっと少し力を入れて彼にしがみつくしか私には出来なかった。
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