第28章 想定外
そう叫ぶ彼を止めるに止められない力。一度止められた足は再び私が指した男の方向へと進んでいく。抱きつく力を強くしても、素足で踏ん張ってもその悟の足は止まらない。
金髪の男方面へと突き出した悟の片手が震えていた…声も怒りで僅かに震えていて……。
「……なんと言おうとそこの金髪の猿と黒いガリは殺す、人の女に手を出しやがって……しかもふたりで寝取っていやがる。
おい…、仲良く順番こか?それとも同時にヤッたのか?ヤクザだかなんだか知らねえけど僕のハルカだ、罪は命を以って償って貰うからな」
指先をクイッ、と動かせば離れた位置の金髪の男が悟に飛び込んでくるように引き寄せられた。呪術だ、それで引き寄せた。そして。
頭部に片手を置き、掴んでる。歪む男の表情。
「離せよ、俺らが何なのか分かってやってんのか、テメエ!」
「分かっててやってんだろ、見て分かんねえの?どこまで頭がスカスカなんだよ、オマエ」
呪力なんて関係なくピリつく空気。
悟を見上げて悟を嗤う金髪。肩を揺らし笑いながら私をちら、と見た。
「ああ、この女の男か~?イイ女だったぜぇ?ええと…サトルクンっつったか?
悟、悟って叫んでるハルカの股はしっかりと俺のを咥えこんで、その口を更に他の男のモンで塞がれてなぁ~…、イイ女だったぜ、サトルクン?嫌がる女ってのは、イカせようとするのか、股を閉じようとするのかチンポをきつーく締め付けて来るんだ、このハルカの中は、」
「……黙れよ」
「へ、へへっ…!いい事教えてやるよ。泣きながら悟君を呼んだそこのクソアマは殴れば黙るんだ、俺達を受け入れて、早く終わって、てなあ~?」
「黙れっつってんだろーが!」
ヤクザの悟を煽る話に悟が低い声で被せる。
思い出したくもない事をペラペラ話す口。その光景を思い出したくなくて私は顔を反らして床を見て。ぎゅっと、背後から悟にしがみついた。
殴ったわけでもないのにヤクザは「イダダダダッ!」と痛がってる。悟が掴んだであろう男の頭に力を込めてるのかな…。
「ンのっ、たかが野郎ふたりに、このカワグチ組に対して何が出来るってんだっ!手ぇ離せや、白髪頭!ただの女一人寝取られたくらいでキレとか器の小せえ野郎だな、タマ付いてんのかテメエ!?
オイ!ただで済むと思ってんじゃねえだろうなァ!?」