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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第28章 想定外


『……私の人生は、未来は、人生の終わりは…私やあんた達なんかにこうも簡単に決められないんだよ……、』

「……あ゙?」

視線はきっと、私に向けられてる。それを確認しないまま、この混沌とした会場で今、まだ見ぬ未来の二十八歳の年が買われていく所で一呼吸、整えて。

『私の全ては悟のものだから、』

"──オマエの全てが欲しい、ハルカの全てを俺に頂戴"

かつて悟にそう言われた事。
私が死ぬまで彼のものだと。いや、死んでも私は五条悟のものだって事を。
指輪は無理矢理抜き取られ、あの地獄を見た場所に捨てられてしまったけれど、私自身はここにある。

生きてる。
私は、こうやって切り売りされていく商品じゃない。私は悟だけのもの、私の未来は彼と共にあるものなんだから。

『残念でした!……あんたらみたいなやつらに、私の意志で私をあげられない、私の所有者の彼の許可が無いんだから』

顔を天井を見るように上げれば顔に青筋が見える、キレやすいみたいな理性なんてなさそうな男。ピクピクと表情筋が動いてた。
掴まれる手が少し持ち上げて、顔を男に向けられなくなって。
ペタンと座ってる私が痛くないように腰を少しずつ持ち上げてたけれどついには体が少し持ち上がり、膝が浮きそうになった。

「ンの…クソアマァ~……、さっきみたいな商品の耐久度チェックしてみるかァ~?あ゙あ?」

髪を掴んでない片手が振り上げられた、だから私は目をぎゅっと瞑る。そのうち、治せる機会がきっとある…

──悟…。
こんなところに彼が来るわけがないのに、心の中で彼が来る事を願ってた。神社で神頼みするように助けてって祈って。

私の少し浮いてた膝がゴッ、と床につき髪が離される。離れた場所からゴッ!という鈍い音、「ギャッ!」という男の短い悲鳴。それは私が受けた攻撃でも悲鳴でもない、すぐ近くから聴こえたもの。

なんだろ?と目を開けようとした瞬間に嗅ぎ慣れた香りとぎゅっと前方から優しく包むような抱擁。
確かめたくて目を開けた。
特徴的な白髪が見えて私の肩に顔を埋めている愛しい人。

「ハルカ……遅くなってごめん…」

『さと、る…?悟…、さと……る…ぅっ』

来て欲しい時に来てくれた彼はいつだって遅刻する、私だけの少し残念な救世主。涙が止まらない、ずっと強がってこらえ、たまに溢れたものが安心して一気に溢れ出す。
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