第2章 視界から呪いへの鎹
『それ?』
ソファー席、私の隣の空間を指してにこにこしてる。
誰も居ない。なに、なんなの?スピリチュアルな事を勧めてるの?
にこにこした悟はその空間からサングラスの奥の視線と指先が空間から私の肩辺りを指し、ははっと無邪気に笑った。
ゾクリ、としたと同時に僅かな疲労。そして空腹。
ちょうど私の目の前にはだいぶ溶けるのが早い、チョコレートサンデーを掬って食べた。甘さが少し疲労を和らげた、仕事帰りだからだろうなぁ……
重いおやつであるけれど夕飯、何にしよう。昨日は私が遅くなるから父が作っていたからなぁ。
じっと観察するように見ていた悟。指していた指はとっくに引っ込められて代わりに机をトントン、と叩いていた。
『もしかして、私変なツボ買わされるお話にでもしてる感じ?数珠とか買わされちゃう?』
「いや、そんなんじゃないよ。けれど面白いの見れたなぁ……まだ存在してたなんて。キミの母方の名字は?おばあちゃんの名字は?その前は?」
がっつきすぎ過ぎて引く。両手を出してその前のめりの悟がこれ以上来ないように制止しようとして、ソファーの背もたれに私は寄りかかった。この人は動きがなんだか読めない。
『父方の名字、今はみたらいだけど、母方も祖母も知らない…、』
「じゃあさっ!じゃあさっ!ご先祖に春日って名字だった!?そういう話家族でした?」
『し、知らないっ!』
「ねぇ!キミってさ、春日一族の末裔なんじゃない!?」
急いでバッグを取り出して、500円を机に置いて走って店を去る。途中、カフェスタッフ止められそうになった所で、『一緒にいる人にお代渡してますんでっ!』と伝え、少し速度の落ちた脚を必死に動かした。
変なの、変なの、変なのっ!にこにこしてたと思ったらハイテンションになって。もの凄い勢いで食いついてくるし。
……こういうのって後着けてきそうなんだよなぁ。裏口で出待ちしてたし。遠回りして帰ったほうが良いかもしれない。
周りを見て、お店に入ったり、路地裏に少し入ってみたり、コンビニに寄ったりして時間を掛けて家の前に辿り着いた。
家の前、右、よし。左、よし。
確認をして玄関を開ける。ガチャ、と控えめな音で入った先には話し声。
話し声…?