第2章 視界から呪いへの鎹
ありのままに起こった事。それは電話を掛けた相手の声がスピーカーと、裏口から数歩出たというのに真後ろから聞こえてきたという事。
えっ電話する意味なくない?と、とっさに理解し私は直ぐに発信を切った。そして電話を掛けた相手を見上げる。店内で会った時と同じく黒尽くめの服とサングラスと、白髪の髪……ニヤケ顔。
自身の携帯をしまった後に、表通りを指を差してほらほらと急かした。
──16時26分 とあるカフェ
『それで?私に聞きたい事って?』
家に帰って夕飯を食べるつもりで、軽くお話をする為に小さめのデザートと飲み物を注文した。長く居るつもりはなかったし。
私はチョコレートサンデーのソフトクリーム部分にスプーンを突っ込んだ所、目の前ではポテトとストロベリーパフェとメロンソーダを並べてポテトを摘んでいる男に質問した。
本題はこの人の質問だというのに、注文した品物が揃ってもなかなか話題を出さないし。ただの食事というか、おやつ……おやつタイムというか。
ちゅう、とメロンソーダをストローで吸った後に口元に弧を描いてやっと本題に入った。
「……キミ、結構疲れやすい?」
『…はい?』
いいから、質問に答えていってよ、と言われて私は頷いた。
確かに、疲れやすい。母が居なくなってしまった頃だろうか?きっと心が精神が落ち込んだままで、体がついていけなくなったんだろうって思っていた。
「ずっとじゃないでしょ?いつくらいから?」
『2年前…くらい?母が亡くなってから、多分寂しさとか悲しさなのかな…』
「じゃあさ、」
自分のアイスを食べながら、悟の言葉を待つ。
その言葉は深い意味を持っていて、私から質問を返したくなる言葉だった。
「キミの"髪が白くなり始めた"のも2年前くらいからでしょ?ハルカちゃんのお母さん、髪真っ白だったんじゃない?」
『え…っ』
ぱっと考えれば、疲れ過ぎて白くなったとか食事の偏りとかが妥当だけれど、追加の母の話があるからその考えが否定されるような。何かが引っかかるような。
少し、考えているうちに、スプーンに乗せたままのアイスが溶けて器に落ちる。私は一度、その溶けかけのアイスにスプーンを突き刺して、両手をテーブルに置いた。ぎゅっと拳を握りしめて。
『つまり、何が言いたいの?悟さん』
「"それ"、ハルカちゃんには見えない?」