第28章 想定外
──痛い、痛い…っ!
痛みに奥歯を噛みしめた。いつまでもズクズクと脈打つ痛みが続いてる。
黒髪の男により乱暴に抜き取られてしまった指輪が、脱衣場内のどこかでカーン、と音を立てて転がってる。痛みで脈打つ薬指。自分達の思い通りにならないのなら何が何でも暴力で捻じ伏せようとしてるんだ、この人達は…!流石はクズの寄せ集めだ、ヤクザ、カワグチ組…!
……痛みに呻いた。本当は泣き叫びたいくらいに痛かったけど我慢して。いつもならばどんな怪我だって治せたのに治すことを許されずいつまでも消えることのない痛みが襲う。ここに拐われる時みたいな、薬かなんかみたいに気絶出来れば良いけれどそんなすぐに気を失うような"お嬢さん"には私はなれない。そもそもツンとする薬で気絶したとしても痛みですぐに覚醒するだろうしね…。
拘束されたままに少し前かがみに、骨が折れているであろう手の痛みに必死で耐える。涙がじわりと溢れ出てきた。
──なんで?私、ただ普通に買い物をしてただけじゃん。それが高専の仲間であるべき補助監督生のヒサカイに売られ、ヤクザの商品にされる、だなんて。私が何か悪い事、したっていうの?
幸せの真っ只中にいたのに急な展開に困惑する。
今の私は幸せとは無縁の状態。服を全て男達に剥ぎ取られ全裸にされて縛られて視姦されて。反撃の隙が見つからず呪術が使えない…なんて情けない状態なんだろ……。
「おい」
そう声を掛けられて床に視線を落としていた私は睨むように男を見た。
……ニヤけた表情がムカつく。
拘束が解かれて、呪術が使える様になったら……覚えてろよ…。ボコボコにしてやるからな。
金髪の男はすっ、と手を伸ばし、おもむろに私の胸に触れた。拒絶するようにビク、と反応した私の体。触れるだけじゃなく男はそのまま、胸を鷲掴む。しっかりとむにむにと、感触を確かめるように。
『さわ、んなっ…!』
睨みを効かせるも意味なんて無いのかもしれない。それでもそれしか抵抗が出来ない。
嫌がろうとも構わずにがっしりと指を曲げてもみもみと揉む手に寒イボが立ちそうなくらいに気持ち悪くなる……だから、触るなって言ってんだろ!
金髪はニヤケ顔の眉間にシワを寄せ、私を軽く睨みながら声を低くして話しかけてきた。