第28章 想定外
266.裏(若干モブレ表現有)
始めは冷水、そしてゆっくりとぬるま湯から熱めのお湯へと変わる勢いの良いシャワー。それを乱暴に身体に当てられ、スポンジに含んだボディソープで雑にごしごしと洗われていく…。
『……っ、』
……なんで私、こんなヤツに世話されなきゃならないのさ?
「…オラ、こっちを向け」
『…』
「向けっつってんだろォがッ!」
私は俯いたままにそいつ側に向く、いや従うしか無かった。言うことを聞き、へらへら笑いながら身体を舐めるように見られているんだ……、そう思ったらその目を潰したいくらいに嫌だった。
ズクズクと痛くとも治そうにも治らない頬。
今の私は呪術がまったく効かない、非術師レベル。午後の体術の授業で生徒同士で鍛え合ったり悟に放課後に鍛えさせて貰ったとしても、今回の拘束は背後からだからどうしても脚しか使えない。そんなじゃ抵抗にならず。
また、素っ裸で逆らったならこの男ふたりにどうされるか、そんな事も分からない無垢な子供じゃないんだ、私は。
体を洗われた後タオルでしっかりと拭かれ、脱衣所で男ふたりに念入りに舐めるような視線で見られてる。
……今は、耐えなきゃ。
恐怖や苛立ちが態度に出ないようにしたいけれど、全てを晒した身体を見ている視線には耐えられなくて視線を反らしてる。
「………指輪してるな、こいつは印象は悪いだろ。捨てておけ」
「了解」
『……っ!?』
嫌だ!と指をまっすぐにしないように抵抗をした。絶対に、これは譲れない。悟からの大事な、大事な贈り物だもん。沖縄のプロポーズからずっとずっと薬指に嵌めていた大切なもの。私が"五条ハルカ"と証明する誓いのリング。
無くしたからといって、買い換える事の出来ない、私達を繋ぐ大事な呪物だから……。
私の抵抗で上手く指輪が抜けなくて苛立つ男達。チッ、と黒髪の男は舌打ちをして強引に抜き取ろうとした。私はそれでも抵抗をしたけれどそうは長くも続かなくて…。
苛立った末に男は暴力へと走っていく。
「チィッ!このクソアマァ、一丁前に抵抗しやがって!」
私の薬指をぎゅうっと握り、本来曲がってはいけない方向に指を強制的に動かされる。呪力を込める事も出来ない、女の指だけの抵抗なんてもはや両手を使える男には意味がなく。
『……あっ、ぐ、ぅ』
強烈な痛みと共にバキ、という手の甲の骨を伝って響く音。