第28章 想定外
『何をするの…、ケアって何?』
「ケアっつったら風呂だよ、風呂。売ったら速攻客の相手だ、すぐにテメェの穴にブチ込めるように綺麗にして、そそるようなお洋服を着せてやらねえとな?」
「経営してる風俗店から取り寄せた、旦那方が悦ぶイイ下着とネグリジェをご用意させて頂きました、とねぇ。後は兄貴、何が必要です?」
「あ?ガーターとストッキングは必須だろ、あとゴムも持ってこい」
売られたら最後、ヤられる前に逃げ出さないと突っ込まれるって事だ……。というかこの金髪は何なわけ?私をこいつの変態趣味に巻き込もうとしてるのでは。
……この状況は冗談抜きにマズすぎた。
誰もここにいるなんて分からない。もしかしたら呪力を辿って悟が助けに来る可能性もあるけれど、呪術の使えない状態の私…既に体に何かをされた状態の私を辿れるのかは不明で……。
金髪の変態趣味を嫌でも耳にしてしまい、その流れで衣装を取りに足早に離れていった黒髪。ドアを片手で開け、そのバーの裏方の浴室と思われる場所に辿り着いた。個人とか住み込み用にしちゃ少し広めで、小さな旅館の脱衣所くらいはありそうな…。
……で服を剥ぎ取られそうになる間に、何故私が呪術を使えないのかが分かった。カサ、という音が縛られた手首とは違う、二の腕辺りから聞こえる……呪力が練れないっていうと呪符だ……、呪力を抑えられてる。それなら傷を付けずに抑えるよね…。
ヒサカイも居たのだし、呪符を持ってきたというならそれで頷ける。おそらくは備品庫とかから持ち出してるんだ。
その呪符は貼る、というかロープで拘束しながらに指先などで触れられないように、括り付けられてるというか。
力ずくで私服がまた一枚剥がされ、外気に触れる素肌。
『……っ』
こいつに肌を見せるとか無理。流石に嫌だ、と僅かにだけれど暴れて脱がされる事を精一杯に拒否した。下着姿の時にまだ自由である脚をばたつかせて。
チッ、という舌打ち。不服そうな表情をした金髪。片手で掴まれたスネを殴り、脱衣所の床に私を無理やり押さえつける。
額を掴んでゴン、と床に押し付ける力は手加減など無く、本気で痛かった。
「暴れてんじゃねえよ、悪い子にはな、お仕置きだ!」