第28章 想定外
「ジュジュツ、コウセン…っての?そこに転がるお前の同僚がお前を売り込んで来たんだよ。前から聞いてた奇跡を起こす女っつーのをこっちは欲しかったわけさ。その奇跡を起こす女、お前を5000万じゃ安すぎるだの最低でも億は必要だのうるせえからな~…」
「……モノだけこっちが受け取って、持ってきた男には価値がねえ。そこの男は後で処分って所だな」
「ああ。そいつの処分は後回しだ。
それよりも急遽入ったあんたが大事だからな、商品を早速売りさばかねえと……」
ニタニタと嫌な笑みを浮かべている金髪。鼻で笑う黒髪を見れば視線が合い、チッ、と舌打ちをされて本場の睨みを受け、危険を感じたのですぐに金髪の方に視線を移す。
『商品…?』
……春日を売りにしてるってなら、治療が主じゃん。もしくは拷問とかの。私は一人しか居ないのだし…。金髪は笑う。
「お嬢ちゃん、ハルカ…っていう名前だっけ?呪術師の界隈、春日っていう珍しい所出身の、五条ハルカ。お嬢ちゃんは俺達カワグチ組のモノ。ただでさえ金を巻き上げる道具だけどもっと良い稼ぎを出せるって若頭の案があってな?あんたはリース品として今夜、競りに出されんだ。
緊急オークション……。急な呼びかけにもあちこちからお前さんを手に入れようと駆けつけてくれる旦那方が多くてなあー……そんなに人気だったんだな~、呪術師ってのは。
ん?春日っていう方が価値があんのかぁ?」
呪術に関しての齧りかけの知識に金髪は黒髪に首を傾げて質問してる。黒髪は「多分春日の方が値が良いんだと思いますよ」と返してる。
……話が見えてこないな、リース品…?
視線はそらさずに固まったままに瞬く。
ええと、冥冥が拷問とかにも使えるって言ってたからそういう、エンコを詰める時とか組織内でヘマした奴とか薬とか場所代が支払えない人とかに罰を与えるのにって事?回復も、こういう裏社会に生きる人らが病院を利用しにくいだろうし治療としての利用価値もあるのかも……。それらを期間限定でたらい回しにするのかな。
黙って男のニヤけた顔を見上げる。するとリース品の意味を教えてくれた。
「ハルカお嬢ちゃんは一時間後に競りに出される。持ち主は俺たちカワグチ組で、一年毎にその売られた先の家で過ごし、次の年はまた違う家って転々と住む家を移動すんだ」
『……?』