第28章 想定外
また、見回している時に気が付いたけれど私の他にも横倒わる人物が近くに居た。
目を閉じ倒れてる…でも生きてるのは確か。胸が上下する体を見るに気を失ってる……多分、暴力を受けたらしい痕が見える。
服から覗かせる顔などの部分に腫れ上がった痕、摺り傷…スーツには足跡がくっきりと残ってて。
その倒れている男はヒサカイ。ヒサカイを見て、ゆっくりとこの部屋で目覚める前の記憶を思い出していく。私が気を失う前……多分、このヒサカイのせいでここに私が居るんだ……。腹立たしいと思ってもこの男も同じ目に遭ってるし、私以上に暴力を受けていて悪い事が返ってきてんだよ、と少しばかりいい気味だって思っちゃった。
ちら、と視線を明らかに表社会に居ないであろう人物達に向けた。金髪がにやり、と笑うとニチャ、と口内から嫌な音がしてゾクリとした…気持ち悪い笑み。
「なあ、お嬢ちゃんはここがどこだと思う?」
『……廃工場とかの倉庫、とか…』
窓もなく、薄汚れた物置。いくつか見えたのはニッパーなどの工具。整備工場とかそういう所の倉庫かな……と直感的に思ったわけで。
金髪は肩を揺らして「へへっ、」と小馬鹿にするように笑う。
「廃工場、ね……。
ここはカワグチ組のカジノバーの倉庫。場所を知ったからってどうする?お嬢ちゃん?」
『えっ、カワグチ組…!?なんで私がそのカワグチ組のカジノバーの倉庫に居るんですか……?』
カワグチ組とかヤバイやつじゃん。
すっごい有名な組織だよ、ヤクザの!ある意味では呪いよりも恐ろしい、非術師の組織。普通に接するようにして強がるも後ろ手がカタカタと震える。これはヤンキーとかチンピラの類じゃなくってホンモノって事。
非術師相手だし、例えヤクザ相手だとしても、最悪、彼らには見えないだろう"怒髪天"などの呪術を使えばって思うけど呪力が練るに力が出ないというか。なんでだか呪術が使えない体。
この感覚はリベルタでのワイヤーの件を思い出した。
今は頬に残る平手打ちの僅かな痛みくらいで他に痛みはなく、もちろんお腹にワイヤーが刺さっているわけじゃないけど、呪術が使えなくなる"何か"をされてるっぽいな……。
どうして私がここに居る?という質問に関して教えてくれるらしい。目の前でヤンキー座りしたガタイの良い金髪。そいつが顎でしゃくる先には私から少し離れた位置に倒れてるヒサカイ。