第28章 想定外
265.
……パチン!
空気を割くような音乾いたと同時に頬に広範囲に痺れるような痛み。
慌てて飛び起きようとしたけど起き上がるのに手が使えなくて、腹筋と勢いで飛び起きた……っていうのに状況は近かった。
というか私はいつから眠ってたんだろ?どこで…?飛び起きた場所はベッドじゃない、寝室でも医務室でも病院でもない部屋。記憶になく横に倒れた身体でこうなってる今の状況が良く分からず、必死に身の回りに起きてることを理解しようとした。
……とりあえず頬がじんじんと痛い。
その頬を触れようにも出来ず、なんで手が自由じゃないのかというと後ろ手に手首で拘束されてるから。
さっきまで寝そべってたのは長座布団の上。頬の痛みが脈打つのはきっと、私の目の前の男ふたりのせいだと分かる。ガタイの良い男の方が私の頬に平手打ちをしたのかな…。
リベルタのボス、寺田が爽やかなほうならこっちは爽やかさのない、暴力に塗れた、まっとうな生き方をしていない……いわゆる"ロクデナシ"の部類。見た目で判断するな、と良く言うけれどここまで外見に表れていて良い人には感じられない。
男ふたりの内一人は程よい筋肉を着けた金髪オールバックのサングラスを掛けた男。もう一人は黒髪で短髪だけど襟足は長めで細めの顔と肉体、頬にいくつかの傷を着けてピアスが左右の耳ともにたくさん着いている。金髪オールバックの金魚のフンっぽく、小声で敬語を時々挟んでた。
知らない場所で急な平手打ちと、見知らぬ人達とで心臓がバクバクいってる。後ろ手の手に変な汗を感じる中で、男ふたりは私をじっと見てにやにやとしていた。
「よう、やっと起きたか?おはようさん」
『……ここは…』
どこだ?と男ふたりの動向に気を許さないまま、確認するように今度は室内を見渡した。どうやらこの部屋は物置きみたいで狭い室内。アイアンラックが壁沿いにあり、ダンボールが突っ込まれてる。
温度を気にするものが保管されてないようで、この物置には温度管理はされてない。だから室内は寒いのだけれど、深緑の軽いジャンバーが私の体に掛かってたみたいでその部分は暖かい(羽毛かな、結構良いやつっぽい保温性)
……少し、たばこの匂いが染み付いてる、ような。