第28章 想定外
ひとり買い物に向かう後ろ姿は僕に連絡をしてからの姿。
その後、自動ドアを出てすぐに少しガタイの良いスーツの男と立ち止まり話してる。ハルカとその男の顔が見えない……まあ、室内のカメラだからね…そしてスーパーに向かっていく二人の映像。
室外の同時刻のカメラをチェックする。するとしっかりと顔が映ってた。東京ではなく京都の補助監督生の男、以前京都で見かけたのと、忘年会にも来ていたから京都の男だろう、くらいまでは分かる。
この忙しさプラス事件の中で姉妹校から人手を借りるっていうのは珍しい事じゃない。丁度うちの前で会ってそいつも買い物だから一緒に行くだとか、ひとりだと危ないから護衛するだとか、ハルカからすぐそこまで付き添いを頼んだとかそんな理由だろ。
それならば僕も安心出来るけど問題は買い物を終えた後の映像。
袋から見えるは赤紫っぽい物体。ハルカは多分、生の芋だけ買ってる……売り切れてたからかな、とちょっとこの消息不明な状況の割にのんびりとした光景で薄ら笑いを零しちゃったんだけど。ふたりが少し話した後にマンション方面へと向かってくる。
映像の中の男とハルカが正面口を通り過ぎていった。
思わず口元を手で押さえて、その映像を眺める。
……どうした?マンションに帰るんじゃないの?と僕が思う中、男はどこかを見て片手を上げた。頭部が道路にやや向かっていてタクシーでも乗るのか、と思ったら違う。その室外のふたつあるカメラのひとつはふたりが映らなくなり、また別のカメラ(向かっていった方向を映してる方)にはその先が映し出されてた。
呪いでも居たのならカメラには映らない、補助監督生が指してたし祓えと言われたのかも、だけどさ……。
離れた場所でハルカが何か覗いてる。
建物の奥に何かを見付けたのか?と思った所、まさかの補助監督生が周囲を確認し、ポケットから何かを取り出すとそれでハルカに襲いかかっていた。
カメラに映る、少し藻掻く彼女の姿。直ぐ側に徐行して幅寄せした車。きっと気を失ったハルカがぐったりしてて、それを抱えて補助監督生はその車に乗り込んでいた。
走り去る車……ナンバーはもちろん映像では小さくてもしっかりと映ってた。