第28章 想定外
隠れた喫茶店…!そういう所って案外、スイーツが美味しいとかでSNSで流れてきたりするんだよね。それに近場にカフェがいくつかあれば、非術師である友人ともすぐに会えてのんびり話す事だって出来る。もちろん、悟とちょっと外でおやつタイムって事だって……。
うむ、これは調査すべきだな……、とヒサカイよりも私の方が行く気満々になってるわ。
ヒサカイはスーパー前からマンションの方向へと指を指しながら進みだす。
「こっちの方角です」
私を追い越し、私を振り向く彼は片手を上げる。そしてにこ、と笑ってマンションのひとつ隣の建物の脇道を指す。
そんなに近い所にあったんか……?、と人がひとり通れるかなって道を覗き込んだ。道ってか路地裏といいますか。歌姫の時だって、隠れた名店が脇道の先にあった。奥に並ぶ赤提灯と、脇道の中の栄えた店舗に胸も踊っちゃって。
……けれど、この先は薄暗く奥には店舗が見えず近道が出来るようにも見えない。何というか、枯れた雑草だとかゴミがいくつか放り込まれて、人が通れるっていっても水道・ガスの点検くらいにしか通らないような……。えー?ショートカットかぁ~?
ヒサカイを私は振り向く。
『あの、本当にこの道で、』
振り向くと同時にガッ、と顔に押し付けられる布。ツンとしたキツイ匂い。
『…っ、……っ!?』
よろめく体を、というか後頭部から押さえつけられて意識が遠のく。力が抜けていく……手に下げた少し重い買い物袋のガサ、という音を最後に私は意識を手放した。