第28章 想定外
ちら、と袋を見てるヒサカイ。透明なビニールから透けてる立派な芋を見て天ぷらでもすんのか?と思ったようで。
……芋天も良いよね。やるとしたら海老とかかぼちゃとか何種類か一緒に揚げて天丼とかね。
残念だけどレシピが違いますんで、首を振る。
『本当は焼き芋だけを買いに。でも無かったんでそれで調理して、悟のリクエストのスイートポテトも作ろうかと』
「寒いですからね。そりゃあ焼き芋も食べたくもなるでしょう」
丁度良く吹く風で一気に体が冷やされた気がする。
こんな所で立ち話を長くしてられない。かといって、私の我儘に付き合って貰ったんだ。お茶なりコーヒーなり飲ませてあげようか。
一度立ち止まってヒサカイの顔を見た。
『……寒いですし、暖かい場所で何か飲まれます?近所の店舗でしたら私、ご馳走しますよ?』
本当は家も近いんで寄って下さいとでも言いたいけど、女性ならまだしも男性って事で悟に「なに僕に黙って勝手に男上げてんの?」と機嫌を悪くさせてしまう。ならば道路の反対側にあるカフェにでも入って暖かい飲み物でもご馳走した方が良い。
自販機でも良いならそれでも構わないのだけれどさ……。
私の提案にヒサカイは目を瞬き、ふっ、と笑った。
「では、お言葉に甘えて。でしたらすぐ近くにですね、ええと…私がこちらに来る時に時々寄らせていただく隠れた喫茶店があるんですがいかがです?紅茶のシフォンケーキが絶品なんですよ」
『シフォンケーキ…』
「……で、お店を出た後、ハルカさんをお家まで送り届けます、じゃないと俺が五条さんに怒られてしまいますからねっ!」
最後は半ばヤケクソな言い方で、悟にかつて怒られたり責められたりされた経験があるんだと察した。
悟、ほんっとあちこちにヘイト買ってんなあ…。伊地知と悟のやりとりを思い出せばそうやって補助監督生なり七海みたいに呪術師の人らにもあちこちにそうやって接してんだろ…。
しかし、まあ…目の前の喫茶店は知ってたけれどシフォンケーキが美味しいお店があるなんて初めて聞いた。
『ふーんー…隠れた喫茶店…!割と最近この辺に住み始めたんで私、そういう情報知らないんですよ、是非ともヒサカイさんの行きつけのお店、教えて下さい』