第28章 想定外
『へー……こっちの通常業務が穴が開くから、そこを借りた人手で埋める、的な?』
「はい…そんな感じ、ですかね?」
通常業務ってか西も東も呪いに関する調査作業はさほど変わらないだろうからスライド式に穴埋めをするって事なのか。
するとこっち、東京の方で何か大きな事件でも起こってるのか、と想像が出来なくてもやもやする。高専内じゃないから皆と気軽に意見交換も出来ないし。悟がなにやら最近忙しそうなのが大きなの事件について、なのかな?
この辺をヒサカイがうろうろしてるって事は近辺に被害を出すタイプの呪いでも湧いたのかな。それで調査をする為にうろついてた…的な。マンションの自動ドア前からスーパーへと視線を送る。
……スーパーに湧いてねえよな…?いつもの感じだとそういう天与呪縛とはまた違った"運"が働いてないか、自身を疑う。
ヒサカイは私を少し心配するように、周囲をキョロキョロと確認してる。
「五条……ああ、ええと。五条悟さんは?」
言いにくいよねえ、普段は五条さんっていう所、私も悟と同じ苗字となってしまったから、周りから私を呼ぶ時が困るでしょうに。
ははは…と苦笑いしつつ『ハルカで良いですってば』と返して。そうでした、と思い出したようにうんうん頷くヒサカイ。
「確か、ハルカさんは単体行動は禁止なのでは無かったのでは?五条さんは?近くに居ないのですか?」
……ああ、やけに気にしてるのは私はひとりでこんな街中を歩いてるからか。納得した。
周囲を見回したのはきっと危ないものを探してたのかもしれない。呪いだけじゃない、人だって危ないのだし。高専内では外出時にはひとりにするな、という話が出ているのは知ってる。
……ただし、ここは住居を出た所。悟からの許可も得ての、近所での買い物だけの外出って事で。
『個人での行動は確かに危ないんですけど、ここのマンションに悟と住んでるので。
今、彼は任務で出掛けていて忙しいし、出掛けてくるって連絡をして近所のスーパーへの外出許可は取ってるんですよ、』
そう言って私がヒサカイに見えるように指差すのはスーパー。マンション出て数歩、一分と掛からない距離だからこそ安心で。ヒサカイは「あー…」と声を漏らし、頷いて笑っていた。