第28章 想定外
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悟に任務が入り、彼を見送ってマンションの部屋で私ひとり過ごしていたある日の事。
テレビをつけていればスイーツ特集が。ランキング形式での人気店のスイーツ。明治から続く店舗から出ているスイートポテトがランクインしていて、それを見ていたら今年、まだ焼き芋を食べていないな~……って。
自分で作る事も出来るけれどさ(石焼き芋というよりふかし芋だけれど)唐突にだけどスーパーに売ってる完成形の焼き芋が食べたくなった。あれ、美味しいんだよねえ。
寒い時期、秋から冬が終わるまでの間が特に凍えた手を温めつつも甘くてねっとりとした黄色い芋が最高だとは思わんかね?
私は思う、寒い時期こそ焼き芋がベストなんだと。昔ばあちゃん家で枯れ葉を大量もあるからと、枯れ枝と共に処分しながら焼き芋をした思い出がある。肌寒い時期だったからとても幸せだった、それから私は寒い時期になると焼き芋を思い出す。
都内だと焼き芋なんてそうそう出来ないもの。でも多くのスーパーで石焼き芋ってやってるから、焼き芋やさんのトラックを探すよりも気軽に買えちゃう。ここに住んで数日経つけど、ひとりや悟との買い物中にいつも目で追っていたのもあって確実に手に入るご近所さんを頭に浮かべた今、めっちゃ食べたくなって。
携帯を手に取り悟に連絡を入れる。"焼き芋食べたいから冷蔵庫に買いに行ってくるね"…って。
冷蔵庫に買いに行く、なんて言葉の背景を知らない普通の人が聞いたなら何言ってるの?と言われかねないけど、悟とは近所にある食材の揃ったスーパーがある事を"冷蔵庫"で通用するもんだから、私のメッセージに既読が着くとすぐにメッセージが返ってくる。
"行ってきな。おならしないでね"と失礼な事をぬかしよる。失礼だわ、誠に遺憾であるわ。こちとら一応レディーですけど??
『チッ……ええと…、ムカつくから悟に春日流術式反転"赫"(ただし術式は尻から出る)をぶちかますよ?…と』
──送信。
すると既読が着いて悟から一言。"やめて、ブラジルまで吹っ飛んじゃう"……あ゙?失礼だなー。例え出しても聞こえないようにこっそりと配慮くらいはするわ!流石に聞かれたくないしっ!
行ってきて良いって話が出たし出掛ける為にコートを着て、マフラーを巻いていると携帯に再び通知音が。