第27章 五条という家
『(唇がむずむずしたらヘルペスだろ)ちょっと待ってて、』
「待てなァい!早く早くゥ、迎えに来てっ」
……ちょっとこの人面倒くさいな。
バタバタと悟が待機してるであろう玄関に行けば唇をすぼめてちゅっちゅっとひよこみたいな口で待機してた。
「もー…なにしてたの~?」
『ご飯の仕込みしてたんだよ、今日は鍋ね。ほらちょっと屈んで』
「じゃあ僕もすぐにご飯作りに合流するね!」
いつも通り、ただいまに対してのおかえりと抱きしめ合ってのキスをすればようやく玄関から移動してくれた。
部屋で過ごしやすい服に着替えた悟と一緒にご飯を作って、今日はどういう任務だったと聞きながら具だくさんで魚介の旨味の滲み出た、美味しい鍋が食べる事が出来た。
まるでご近所すぎるスーパーが有料冷蔵庫だね、とか冗談を言いつつアイスを食べて。
学生の休暇は残り十日程、明日からの三日間は硝子の休みの為に代わりに私が医務室を担当するので高専の寮で過ごして、それが終わったらまたマンションで学校が始まるまでは悟と暮らす。あまりここには刺激は無いけど彼が帰ってきた時から一緒に居られる事は嬉しいし、より独り占めしてる感もあるし…。
クリスマス以降の多くの日々を、悟からのプレゼントの部屋でこうして過ごしてる。多少の退屈との引き換えに得た危険の無い日常はそれは幸せで、この数日間が小さな世界で廻ってるようにも感じる……そんな学生の冬休みというものを私は満喫していた。