第27章 五条という家
苦笑いしてる声で少し雑に撫でる手。埋めた顔を上げて見上げれば私の髪をかきあげ、胸に押し付ける彼。
「こんなに可愛いとなかなか出掛けられないっちゅうの。あーあ、任務行きたくなくなっちゃった、今日は家で奥さんとごろごろしてようかなあ~、どうしよっかな~?」
『駄目、さぼるな、行け』
「シビアだねえ……」
もぞ、と顔を上げて素早く悟の唇に触れるだけのキスをしておく。少し緩んだ彼の腕からするりと抜け、まだ熱の残る布団へと潜り込んで目元だけ被らないで彼を横になったまま見て。
『いってら。私、もうちょっとだけ寝とく。だってまだ五時だもん』
彼の言葉に甘えてゆっくりと寝ておく事にしよっと。悟は瞳を細めて笑うと手を伸ばし、布団から出てる頭を撫でられて。
「うん。今日も頑張るね。いつも留守番させてごめん、生徒たちの冬期休暇中には必ず僕も休みを取れるようにするから。ネットとかで行きたい所探してなよ」
『ん、あったかい所が良いな。それか温泉旅館とかさ!』
そういえばデートらしいデートを最近していない。買い物だとか日常の必要品の補充やご飯ってくらいで。五条家の挨拶はデートにも入らないしね?
たまにはのんびりと泊まって時を忘れるようなデートをしたいなって。今の悟は忙しそうだから休んで欲しかった。
「……あはっ!そうだねー…オマエミノムシみたいに包まって寒そうだもんね?あったかい所で朝から晩までイチャイチャしようね?」
『…ん』
優しい表情を向けふわ、と笑った悟。
ギシッ、と小さく軋んだベッド。沈んでいた分が元に戻っていく。悟は声を小さくして「行ってきます、」と振り返った私に投げキッスをしたから、顔を出した私も『いてらー』と投げ返した。
パタン、と遠くで玄関のドアが締まった音を聞く。
きっと今日も夕方頃から夜に帰ってくる。良かった、朝のうちに静かに任務に出掛けようとしてた悟を見送れて。でもギリギリだったみたいだから、もうちょっと早く起きて朝食は作ってあげたかったな…。
ゆっくりと重くなっていく瞼に身を任せれば入眠は早く、あっという間に一時間が経過して自分のアラームが鳴って起きて。