第27章 五条という家
一瞬、苦笑いしたねえさん。「アッハイ…」と言い、ゆっくり頷いて「凄いね……」と私に向けて意味深な事を呟きつつ。腕の中の我が子へと視線を落とした。静かだと思えばぐっすりと寝ているようで悟が騒いでも起きることなく熟睡中のようで。
その様子を見て悟を振り返り『騒いじゃ駄目ね、起こしたら……分かってんでしょうね?』とサングラス越しの目をきちんと見て釘を刺しとく。にこにことしてる悟は「分かった!」と小声で返事をしてじっとその寝てる子を覗き込み始めた。
おっかない顔した男ふたりと巨人の視線に、ねえさんの腕の中の子は一度しゃくりあげる。言葉という音で騒がずとも、視線という気配がみっつ。それら全てが騒がしく、色々と過敏な乳児はヒクッ、と反応をする。
「「「あ」」」
ほぼ同時に男たちの声が上がると、睡眠モードから切り替わった赤ちゃんがしゃくりあげながら大きな声で泣き始めた。
『お、おー…すっごいパワフルだねえ、うちの兄貴そっくりか~?』
「よーしよーし…、結構過敏に反応する子だから、みんなに見られてる事に反応しちゃったのかもねー……。
ハルカちゃん、抱いてみる?」
少しグズるくらいまで落ち着いた所で私にと傾ける、ねえさんの腕の中の子。
私が…?と、自身を指差しつつ、また泣かせてしまうかもしれないという不安もあるけれど、この際だからとそっと両手を差し出して。落とさないように、機嫌を損ねないように丁寧に扱いながら受け取る。
小さく見えてしっかりと重たい。そしてとても暖かい。ぬいぐるみや人形ほどの小ささ、それでいてちゃんと人としてのパーツが出来上がってる。乳児を抱く機会なんてそうもないものだから感激もするってもんで。
『おー…すっごい…!ぽかぽかあったかい……これが子供体温ね、熱量すごいねー……手とか、これちっちゃいし……というか全体的に…小さい…ね?』
「ふふふっ、こーんなにちっちゃくてもね、ちゃんと指とか全部の指を使って掴んでくれるの。不思議だよね、こんなに小さいのにしっかりと人なんだもん……」
小さすぎて触れるのに戸惑いはしたものの、一度抱っこすれば戸惑いは消えていく。
おくるみに包まれた赤ちゃん。この子は男の子だって聞いてる。ねえさんに良く似てるけど、ちょっとうちの兄貴の成分も現れてんなあ……。