第27章 五条という家
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お風呂セットを持ち、悟と一緒に浴室へと向かってる。
正月だからなのかな、夕ご飯が気合が入ってるね、五条家!品数が凄く多くて、また高級な食材も揃ってた。
伊勢海老なんて食べて良いの…!?我が家でおせちの海老、食べられても痩せ気味の小ぶりな海老だったのに…!
どれもこれも美味しくて、部屋でのんびりしながらぼんやりと牛っていいよな、反芻してよお……と食事に思いを馳せていたら現実に戻したのは悟。お風呂入ろうって。
そんな訳でるんるんとご機嫌な悟の案内で脱衣場へと辿り着いたわけでして。
「機嫌良すぎ、単純だねえ、ご飯でそんなにハッピーになっちゃう?」
『いいじゃん、めっちゃ美味しいんだもん』
首を傾げながら、私達だけ脱衣所に入ったって事でドアを締める悟。ガチャガチャと金属音を立てしっかりと鍵を掛けて。
「あんなの、いつもの食事みたいなモンだろ?飽きない?」
『……はい?』
あんなに美味しいものを飽きる、とな?
悟は何を言っているんだ?と私はお風呂セットを抱きしめながら不思議がる悟の顔を覗き込む。飽きないっしょ…?あんなに美味しいのに……。
えっ?とでも言いそうな悟が首を傾げた。
「ありきたりな和食でしょ。僕は慣れてるからどちらかっていうと洋食だとか、家庭の味の出るオマエの手料理の方が好きだけど……」
『え…ええ~…、ううん。嬉しいような嬉しくないような…』
「何その反応。イシツブテ?えうんえうんみたいなさー」
『イシツブテはエヴエヴーンズバボ、くらい後半枯れてるでしょ…』
……悟の揚げ足はおいといて。
ちょっと微妙な気持ちになるなあ……。私の料理が美味しいっていうか、彼が言いたいのは飽きてるから、和食とは別の種類のご飯か、プロじゃない素人の味付けの違う私の方が好き、とな。
なんとも言えねえ……という微妙な表情をしてたであろう私を見て、脱衣所の棚にお風呂セットを置き、両手がフリーになった彼は両手をわきわきとさせている。
にやあ、といやらしげな笑みを浮かべて。やだ、変態オヤジっぽい。