第27章 五条という家
めっちゃ可愛い。あのカメラの呪物がまだ現存してて今へと帰る方法が確立されてたら見せて!抱っこさせて!触らせてー!くらいには触れ合いたいくらい(手段がないから出来ないけれどね!)
ふっ、と妖艶に笑う悟は少し体を傾けて耳元に近付く。
「そのうち見れるよ、こういう赤ちゃん。なんなら今すぐ下準備する?」
『……はい、次のページ行ってみよー』
この流れでえっちをする空気になりかけて、そのフラグを折っておく。今、昼間ぞ?というか夕方に入った所ぞ?どうせ今したとしてまた寝る前にもするんでしょ、実家でどんだけハッスルするつもりなんだ?防音とか無いでしょ?
ぱら、と静かに捲るアルバム。子作りフラグ回避をしたので頭上で小さくチッ、という舌打ちが聴こえた。はいはい、ご機嫌ななめですねー、と大して気にすることなく捲った次のページの写真達。
表紙を捲ってすぐのはたった一枚だったけれど、あのしっかりとした両親の子。悟はちゃんと愛されていた。この29歳になって一ヶ月も立たない現在の彼。身体はしっかり大人なのに心は未だ衰えずやんちゃを忘れない。そんな悟の性格を形成する前の赤ちゃんだった時代をきちんと写真に残してる。
笑ったり、眠ってたり、カメラ目線だったり。やはり神に愛された人間なのでは。
『乳児製品のモデル出来るわ、この悟……、かわいー…』
「ありがとー、GLGはCLG(キュートルッキングガイ)でもあった事実、生まれつきだからハルカも認めるほどに可愛いって事だよねー」
『自己肯定力高すぎ君め……でも、ほんっと可愛いねー、確かに天使って言われても違和感ないわ……』
ふっ、と声を漏らして笑った悟が着物越しの私の手に重ね、すりすりと手を撫でる。ボディタッチは艶かしく。いや、自分のアルバムをネタにここで盛るなし……とは言わず、その顔をじっと見てすぐにアルバムに視線を落として。
乳児は四足でにこにこと笑顔を見せ這い回り、子供時代のイベントの記念写真にカメラ目線をし、二足歩行までするようになって。ページを捲る毎に、その光景の体験も見守っても居ない五条悟という男のこれまでの人生を見せられている、見守っている気持ちにもなる。
ただ、自由を謳歌する幼少期。ページが進めばランドセルを背負う子供になる。あんなに天使のような笑顔は少しずつ消え、どうやらお稽古の写真ばかりになっていく。