第27章 五条という家
自室にでもあったのかな?「中学と高専時代の制服とかも取ってあった!」とうきうきしながら、畳にドサ、と置くアルバム。机じゃないのか……と座布団から離れて畳へ移動し、畳の上で重なったアルバムの上の一冊に手を伸ばした。
『見ちゃっても良いの?』
触れたアルバム。見上げた悟は微笑んでいる。
自分のものでありながら、私に捲って、と言いたそうに。
「ん、どーぞ!」
『では、ありがたく……』
ふっ、と彼に笑ってから視線を下へ。
シンプルな装丁、固めな表紙を捲ると久しぶりの空気に触れた中のページが少しめりめり言いながら、フィルムでカバーされた写真がすぐに目に入る。
彼の成長を記録する、記念すべき最初の一枚を飾るのは、白髪のぽやぽやとした赤ん坊の写真。眠っているシーンのようで、柔らかそうな布に包まれたその子の写真の下には"1989年12月7日 悟誕生"と手書きで記入されていた。
平面な写真でもよく分かる。
ぷにぷにとした柔らかそうな頬。伏せたまつげも白く短く生え揃い、ぷっくりとしてとても小さな手は握りこぶしを作ってる。正直言ってかなり可愛い。なるほど、悟がアイドルっていうのも頷けるわ、自称じゃない、自他共に認める可愛さ。
……私なんて実家のアルバムで、生まれたての真っ赤になってガチ泣きしてたり爆睡してたりする自由気ままな姿を撮られてる。それに対して悟の写真は一発目からしてどっかのサイトだとかパンフレットの素材になるレベルに可愛い赤ちゃんです、と言っても過言でない写真。
フォトショ加工なんて当時無いだろうしな…、天然の美がここに生まれたってワケか…。
『うっわ、生まれた時から約束された可愛さじゃん!』
アルバムからふふん、と自慢げな鼻息で笑っている彼を見上げる。あぐらをかきつつ腕を組む悟。この天使の写真から29年後の姿。
「僕、めっちゃ可愛いでしょ?」
これには頷くしかない。私は悟に向かい大きく二度頷いた。