第27章 五条という家
チャリン、と木箱の横に付いた小さな賽銭箱の上部のような場所に百円を入れると先に入っていた硬貨に埋もれる音がする。ゴソゴソとかき混ぜながらひとつ取る悟の後に私も百円を入れてふとこれだ!と感覚的にひとつ取って。
互いに視線を合わせた後に無言で留められた紙をぺり、と剥がして開封していく。
『さて、運勢というか、お返事はどうなのかな、』
「僕の方はー……うん、一緒に見せ合おうか?」
『「せーのっ!」』
声を重ねて同時に見せた紙面にはふたりとも同じく"大吉"という文字。
お願いした事が叶うのならばそれは嬉しいな、と良い一年が過ごせそうで頬も緩む。
『引き分け。勝負ってモンじゃないね、これは』
「そうだね。ハルカのお願いも叶うと良いね?」
『そういう悟もね?』
大事に取っておこう。私が財布にしまうように悟も大事そうにしまってる。今年中、これは大事にとっておこうっと!
おみくじをしまった財布をしまい込んで重ねた手、絡める指。見上げたサングラスの奥の視線と、こちらを慈しむような表情で微笑む悟。
「もう少し、露天とか寄ってからゆっくり帰ろうか?」
『ん、そうする。あ、悟射的とかあるよ!?ゲーセンの腕前見せるとこじゃない?』
再び引っ張られながら「遊んでくよ!」と彼に引っ張られて。
──私のお願い、"ずっと彼と一緒に居られますように"が今年だけじゃなくて来年も有効であると思いながら、私達夫婦は神社の賑わいの中に溶け込んでいった。