第27章 五条という家
とんでもない事言いながら心配そうに覗き込む彼。丁度前の人が去り一歩進みながら真顔で『ちげーよ?』と否定しておく。
さて、私達の番。お辞儀して、私は五円、悟は五百円。カラン、コロンと賽銭箱で転がる音を聞き重たそうな鈴をジャランガランとふたりで鳴らした。
二度頭を下げ、ぱんっ!ぱんっ!と乾いた音を立てて手を叩いて。願うものをひとつ、心の中で祈りふと隣を見れば瞼を伏せて手を合わせ、何か真剣に祈ってた。
……悟は一体、なにを神様に願ったんだろう。何としてでも叶えたいって思いで…。
『……』
「………」
前を向いて、最後にお辞儀をして。
ひんやりと外気に触れて寒い手が「じゃ、行こうか?」と再び暖かい彼の手に包まれる。急にぐいぐいと散歩にテンションの上がってる犬のように引っ張る悟。足元ヤバイからそのぐいぐいすんの、やめろや!
『あっ、ちょっと待って!』
「はいっ!ガチャターイム!今回のわしゃがな、おみくじ開封の回だよー!大吉が出れば当たり、大吉リセマラ始まるよー!」
『元気だな、オイ!これYouTube企画じゃないんだけどな!?』
幼少期の近所のちびっこみたいなノリで引っ張る悟は社務所付近の簡易テントの下、様々なおみくじの並ぶ場所へと私を連れてくる。社務所付近も来た時と変わらず賑わっていて、忙しそうに御朱印の順番待ちをしてる人や、お守りや熊手を買う人、破魔矢を買う人……参道を挟んだ先の授与所では私達みたいにおみくじをする人が居る。
いろんなおみくじがあるんだなあ……、シンプルなモノから金メッキの縁起の良いおまけ付きのもの、恋みくじ、干支の人形に入ってるもの、フクロウ、カエル、猫……パワーストーンに扇みくじに棒タイプのモノも簡易的に建てられた看板に案内が書かれてる。
……わあ、今時おみくじ帳なんてものもあるのか…。
ずらっと並ぶおみくじを見て、悟はシンプルなものを指差した。
「ピカチュウ!こいつに決めた!」
『……はぁー…、そんな事言ってると大凶引き当てるよ?』
「えー?GLGに神サマがそんな酷い事しないっしょ。普段から教師として、呪術師として、旦那さんとしてがんばり屋な僕にはそれなりのお返事が返ってくるよ」