第27章 五条という家
楽しげに覗き込む彼にふすん、と鼻で笑いつつ。
『……言ったら願い事が叶わなくなるから悟には言わない!』
「あー!このー、人に聞いて自分は言わないんだからっ」
『悟も結局教えてくれなかったんだしいいじゃん、いいじゃん』
このっ!このっ!っと互いに脇腹を小突きあいながら列は少しずつ進んでいく。手水舎で清め、重音でガラガラと皆が気合を入れて、上白の縄を揺らせば、大蛇がうねるようにも見える。その様子と大きな鈴を鳴らすのを聴きながら、どのお願いにしようか?なんて考えてた。
……うん。お願い事はいっぱいあるよ?でもその中でひとつとなると並びながらひとつずつ削ぎ落としていって、特にコレ!っていうのを頭の中でせめぎ合わせてる。
「次だね、丸太は持ったか?」
『そこ、丸太じゃなくてお賽銭だよ、除夜の鐘でもないしここは彼岸島じゃないんだから……』
私の握りしめた片手には五円玉。悟はにやり、と笑って人差し指と親指で挟んだ一番大きな硬貨……、去年発行されてるピカピカの五百円玉を見せる。
「ジャジャーン!おそらくは神社でのサプチケレベルの課金でーす」
『うわっ課金厨だ!意地でも叶えてもらう気満々じゃん!』
「へっへー!もろたで工藤!お願い優先順位は僕のモンや!」
調子に乗りまくってる悟。
音を鳴らしたりするために賽銭箱に入れるだとか、鈴を鳴らすだとか、そういうのでお賽銭の金額にはこの金額!だっていう違いはないとか聞くけれど。流石に五百円となると凄い!って思える。
……ここで紙幣をドーンと打ち込んだら流石に引いてたけれどね。
悟はとん、と硬貨を握りしめる拳を胸に置いた。
「男には叶えたい願いがあるってもんよっ!」
『……肩につくほどのヤツを願うなよ~?天を貫く程の、とかも。マジで』
彼ならば願いかねない。
巨根を願われ叶えられたら最後、毎晩が除夜の鐘突きプレイだ、それだけはマジ勘弁!
「……もー、そんなのは願わないって!
何、もしかしてオマエ欲求不満だったりする?除夜の鐘ならぬオマエん中108回以上突いてあげよっか?欲求不満も解消するでしょ?」