第27章 五条という家
並び初めて数十分経過して。
拝殿まではまだ遠い。皆が皆、そわそわと自身の腕を擦ったり、上下に踵の上げ下ろしなんかしてまだかまだかと自分達の出番を待ってる。カイロを握ってる人を見て、そういうのもあったか~!と思いながら、私には互いの体温を共有する繋いだ手があるからカイロよりもこっちが安心出来るか、とひとり納得しつつ。
神社に来たからには悟が言った通りおみくじも引く。でもおみくじは最後に引く。こういうのって、神様に祈ったお願いに対してのお返事がおみくじなんだとどこかで聞いていたから。
丁度また一体祓い終えた悟を見て、『ねえ、』と白い息を上空に向かって吐いてる彼に話しかけた。
『悟は何をお願いするの?』
ただなんとなく行列の中で参拝するため、順番が来るのを待ちながらの話題として出してみただけ。
私の問いに私の手を握った彼の手が僅かに力を込められて、口元が弧を描いた。
「えっやだよ。なにオマエ、僕のお願いを知りたいの~?……ンフッ、えっち!」
『どこがえっち、やねん。えっ、何"そういうネタ"を神頼みすんの?止めてよね、神様もドン引きするわ』
「大きなイチモツは願わねえよ?充分でけえし」
『待って私そんな事言ってない、ヒントとしてどぶろっくかよなんて言ってないんだけど?』
そんな事願われてもしもここの神様が悟の願いを叶えましょう、なんて事になり(無いと思うけど)更に大きくなってしまったらとんでもない事になる。ただでさえ大きいのにこれ以上デカイものは私の下半身が受け止めきれない。人類は金属バットを受け入れる構造をしてるんじゃないんだぞ?あの骨盤の穴、骨盤腔はオロナミンCは大丈夫でデカビタはアウト、あと女性は子供をなんとかして産み出すけれど、肩に着くくらいの大きなイチモツの直径は迎えることは不可と思われる。
……彼に股間の巨大化のお願いをもしもされたというのなら神様にはお返事として大凶を食らわせて欲しい。それ無理…駄目です、とね。
きっと渋い顔をしてる中で彼を見上げてたら、口を尖らせながら繋いだ手を前後にぶんぶんと子供みたいに揺らす悟。
「僕ばっかに聞いてないでさ。聞いたからにはハルカは何をお願いすんのよ?ほら、おせーておせーて!」