第27章 五条という家
……なんだなんだ、指輪以外って。指輪から彼へと見上げればにっこりと片手を上げて私の背後、マフラーを避けた隙間から首筋をつぅ…、と冷たい指先で触れた。
思わず反射的に私の体が跳ねる。
『ほわっ、冷た…っ!ちょ、何すんねん!?』
「ククッ!相変わらずイイ反応すんね~?この人だかりの中での嬌声じゃないってのが残念だったけど!」
そう言って彼はまた、うなじ辺りに指で触れてる。なんだ…?と不思議に思いながら、はっ!と気が付いた。
隣の彼をじっと見て、その口元に弧を浮かべる悟のサングラスの奥と視線を合わせる。まさかのまさか、マーキングって…そういう事じゃねえだろうな…?
『まさか。まさかだけど悟、キス……首ん所に痕付けてんじゃないよね?』
ジトー…と疑う視線をあえて彼に向ければ、満面の笑み。サングラスの奥の瞳が完全に細められておりますね!
「ん?つけてあるよ?白地のオマエの肌に目出度く紅白……赤色の五条悟の女ですって印が二箇所。僕の親父も昨夜の熱い姫始めの痕をガン見してたね~!
息子がしっかりと当主として跡継ぎ作ってる証拠だもんね?ヤッタネ!」
『うっわ!ヤッタネ!じゃないでしょ!春麗か、あんたはっ!?あっ!だから松竹梅トリオも固まってたんだ!サイアク!なにやってんのポイント高得点じゃん!もー……人に見られる所に付けないでよねー……』
もう見られちゃったからどうしようもない、仕方ない。うなじの所の痕については忘れて下さい、なんて言ったら知ったかぶられながら「なんの事でしょう(笑)」だ。
あの「あ」の真相を知り、今更になって恥ずかしくなって、冷たい外気の中で頬や耳が熱くなってる。
そんな私を見て彼は楽しそうに笑った後に繋がった手をきゅ、と握る。
「マーキング済もそうだけどさ?オマエへのお触りは僕だけが許されるものなのにね?」
離れた位置できっと非術師には聴こえない金切り声が数メートル先から上がった。さっきのゆっくりと近付いてた呪いが悟によって祓われたんだ……私の射程距離から離れた位置であっという間に祓われていった呪い。
呪術師としてもそうだけれど、私を守るために悟は近付こうとする呪いをそうやって数体祓っていった。