第4章 乱心、暴走
28.
グラウンド(運動場)にやって来た。体育館だと医務室の時の様に穴を開けてしまいそう。そういう悲劇を察知した私は、手を引かれながら"体育館穴開ける!体育館穴開けるから!"と体育館行きを全力で阻止した。必死さが伝わったのかどうかは分からないけれど引っ張る方向はこっちになったってワケだ。
軽く体を解しながらもちらりと悟を見た。ほんとにちらっと。
そして自身の体を解しながら考える。
……私、ひとりで重く考えすぎてたのかなー…。悟が何も無かったように接してて私がうじうじと気まずいって考えて馬鹿みたいだ。28歳児って言ってたけど、そういう所は大人なんだ……いや。
そりゃあそうだよ、悟にとっては遊びだったんだから。変な意味はない、ただの子供のノリの様な、ごっこ遊び。ただのその遊びに私が本気になりそうになっただけ。
虚しい恋人ごっこに好きになってきてた私の負けだ。二日酔いもあって、良い気分には向かうことはない。
視線を伏せていれば、悟の足元が入ったので顔を上げた。
「……よし、じゃあハルカ。今日は反転術式も出来たんだからそろそろ呪力や呪術について身を持って分かってきてるでしょ。体の強化を目標にやっていこう!きっとすぐにマスター出来るよ!」
『……うん、多分。いつもの術式とさっきの反転術式の感覚、その違いが分かってきたから、身体を強化するっていうと……、』
じわじわとイメージして手足へと延ばしていく呪力。自分じゃ分からない。けれども腰に手をあてて数歩先に立つ悟はじっと私を見てる。
にっ、と笑って親指を立てた。
「そうそう、そういう感じだよー、そのままいつもの体術来てよ、」
感情を抑えてとはいうけれど。呪力を一定に調整するというけれど。
少しだけ苛立つ気持ちを入れて私は悟に向かっていった。
───
─
『づがれだ』
地べたで横向きに寝転がる。こうも毎日汗だくだ。学生時代以上に運動してるのでは?容赦なくない?命に関わるからっていうのは分かるけれど…。
体を起こして髪についた砂を振り落とし、服の砂を手で叩いて払った。
悟は憎たらしい程に汗すらもかいてない(様にみえる)、変わらずにニヤケ面だ。