第27章 五条という家
見上げてウインクをする悟。その彼の隣にゆっくりと腰を降ろしつつため息が出た。この人、生理中以外はどんだけ忙しかろうが、場所が変わろうがどこでもする気満々だわ、これ…。
『……あのね、悟?人前では猥談はしてはいけません。いいね?猥談はやめましょうね?…聞いてるカナ?』
「んー?書類に集中してるから僕分かんない、頭に入ってこないから後にして?」
『おいおいおーいさっきまで普通に会話してたじゃん!そういう所、良くないぞ~?』
「ン~?何言ってんだろー、集中してて聞こえな~い!」
横顔を見れば少し面倒くさそうな表情で文字を追ってる視線。私とふざけながらのやりとりをしていたけれど、真面目に仕事をしてるように見える。悟はすらすらと走らせていたペンを止め、小さく息を吐いて。
「もう少しだけ待ってて。あと数枚分終わらせたら僕も着替えて僕の親ん所にオマエを連れて話をしに行くから」
『……悟のご両親、この書類?終わるの待ちなの?』
流石に元旦に帰ってくる事や、今帰ってきてるってことは知ってるはず。会う前に当主としてやるべきことをさせてるんだろうな~…と思っての言葉だったのだけれど。
視線を私に向けた彼は瞬間的に真顔になってから、悪戯っぽい笑みを浮かべ始める。おや?なにやら事情が違うみたいですね??
「……あはっ!そんなワケないじゃーん、きまぐれでこっちを優先したの。親父達は多分貧乏揺すりでもしながら首伸ばして僕らを待ってんじゃないの~?」
『やりやがったな!だからそういう所っ!』
実家でも遅刻癖だしてどうすんねーん、と彼の腕を掴んで立たせて。「わーったわーった!着替えるから!」という悟が着替え終えるのを見守りつつ、ふたり揃って悟の両親の元へと急ぎ足で向かっていった。