第27章 五条という家
「はあ~…新年早々家の仕事とか面倒くさいねえ……まあ、誰かがやらなきゃいけないからやるけどさ。
僕が用事をちゃっちゃと終わらしてる間に、ハルカの着付けしといて。幾つかあるでしょ?なければ契約してる呉服屋だっているんだ、呼び出してでもいいからこの子に合いそうなのをお願いするよ」
「はい、かしこまりました」
代表格の女性は頭を下げた後に「ショウチクバイ」と呪文のように何かを口走れば数名の名前を呼び出す。一歩前に出たのは三名の女性、もしかしてそれぞれ松とか竹とか名前に付いていてそれを略してるのかも…。三名はそのまま私の前に並び、ぺこ、と頭を下げて。うち一人、真ん中の女性が「着付けを担当させて頂きます」と言った。
え、着付け…?着替えんの?と困惑しつつ悟を見てると彼は短く笑ってる。
「せっかくだからうちにあるものでおめかししときな。僕の親と会って、お昼を食べたら近くの神社に初詣しに行くよ!」
いつものアゲアゲなテンションで「おみくじで大吉が出るまでリセマラね!」と私に向かってウインクをして、新年から元気キッズかましてるので思わず笑みが溢れる。いつもの悟の調子を見てたらこのガチガチの変な緊張も解れるわ。
『初詣行くのは良いんだけどさ?……おみくじにリセマラはないわー…』
「ンフフ、そう?先に出た方が勝ちで。そこらの単発ガチャよりは確率は高いはずだね!勝った人が本日の主役~って事で」
『……主役って。会社の飲み会じゃねえんだぞ?』
「いいじゃん、いいじゃん!新年、楽しんだモン勝ちよ~?」
ひとり浮かれる悟をしらー…っと見てると頭にその大きな手を乗せられて、ぐい、と斜め前へと少し押される。その勢いで数歩前に出れば先程代表の女性に呼ばれていた三人が目の前で再びぺこ、と頭を下げたので私もとりあえずのお辞儀を…。
「じゃ、とびきり可愛い和装に着替えてきてねー!後で合流しようズェっ!」
『……ずぇ…?』
古臭く「バイビー!」といって手を振る悟を視線で追う。おめえはシゲルか?ポケモンのシゲルなのか?じいちゃんはオオキドユキナリか?
私の荷物を持つ手にするりと手が触れる。それはひとりの手が伸び、私の手からその荷物が持ち上がり引き抜かれていく。身軽になった瞬間にそのひとりの若めな女性を見れば微笑んでいた。
「荷物はお預かりします。では、奥様こちらに」
『……はい』