第27章 五条という家
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元旦。高専を出て、悟に連れられて到着したのは大きな屋敷。その家は代々的に伝わっているであろう和風の家だった。
外から見ても手入れがきちんとされていると分かる。屋根も外壁も綺麗で植えられた木が手入れされ、塀などもボロくない。私が去年数度通った春日家も代々と伝わる歴史ある屋敷だったけれど手入れはここまでされてなかった(本家に居た人間が少なかったのと、外部の人間をそう簡単には敷地内に入れなかったって事もある)
たくさんの人間を抱えているんだろうな、とは思っていたけれど……。
着物を来た使用人達が並ぶ中で代表の女性により新年の挨拶と共におかえりなさいませ、と礼儀正しく迎えられる。目を見開きつつ、とんでもねえ場所に来てしまったな……と改めて思うよ。
悟はこの五条家のお坊ちゃまだからどんな服でも良いとして。私、普通にコートとか着てるんですが……?この雰囲気、着物とかそういうレベルじゃないと弾かれない?レストラン等のドレスコードしてから来い、みたいな感じにさ。
悟もコートにマフラーといった服装でも実家だからセーフ、私は完全に場違いでは…?という気持ちになる。
ごくり、と固唾を飲んだ。
す、凄いな…改めて今、五条家当主というポジションを確認したわ……と隣のサングラスを掛けた悟をゆっくりと見上げた。彼は五条家前にずらっと並ぶ人達に笑顔を向けている。
「あけおめことよろー!はい、これお土産ね、皆で食べて。
で、お袋達居る?元旦だし流石に居るっしょ?」
うわ、かっる!
……いつも悟は家でこんな感じなのかな…?といつもと変わりない悟を斜め下から見上げていれば、持ってきたお土産をその使用人の代表者に見える中年の女性ひとりに、ずい、と突き出してる。
頭を下げ紙袋を受け取り、そんな悟の態度に微動だにせずに頭を下げた女性。にこにことしながら「ええ、おります」と言って茶の間に居るだとか、悟宛に手紙がだとかしばらく帰らなかったであろう、悟に色々と報告もしてる。にこにこしてた悟も機嫌が少しずつ損なわれていく。表情でそれ僕が全部やんの?とでも言いたげな顔。
それらの報告を適当に相槌をして嫌な顔をしながら、女性を私の肩にぽん、と手を置いた彼。