第26章 だから師走というんです
255.裏
わくわく。そわそわ。今年の年越しは実家の父と一緒……ではなく、悟と一緒。
大晦日の夜といったら蕎麦でしょう。年を越す大晦日の夕食には蕎麦を茹でて、あおさや海老天、ネギに大根おろしをたっぷり入れて。私の実家では二十三時を過ぎた辺りに食べてたけれど(父が呑兵衛だったこともあり、その時間に口さみしいからってね)
「蕎麦って縁起が良いんだよね」
『ん、健康食だから健康運とか?』
ご馳走さまでした、と綺麗サッパリ食べ終えた夕食。
白菜の浅漬をつまみつつ、カチャカチャと食べ終えた食器を重ねている悟。どんぶりを重ねた所で頬杖をついてにこ、と笑ってる。
「んー、確かに健康食の代表でもあるよねー…。
細く長いから寿命を伸ばすし家運を伸ばすって意味とか、蕎麦って良くぷつぷつ切れるじゃん?だから苦労だとか厄を切るとか、蕎麦を食べたら運が回ってきたから良いとか……諸説はあるんだけれどね?だから縁起が良いんだ」
ぽりぽりと皿に乗せた白菜をつまみながら悟の蕎麦トークを聞き。
…へえ、なんとなーく大晦日の夜は蕎麦って決まってたけど。
単純に初めて知ったからと彼の話をうんうん頷いて聞いていたら、ふん、と鼻を鳴らしドヤ顔をして親指で顔を指す悟。
「こう見えても僕、呪術界のオモイカネだから。知恵の神と崇めたまえよ?」
『ははっ、大げさすぎっしょ』
長時間放送する番組も多いし、ネットでの放送も年をまたぐ企画モノが多いし何観ようかな~って、ドヤ顔から視線を反らしテレビのリモコンの番組表をポチる。紅白かガキ使か…うーん、どうしようかな?
「……訂正。天満大自在天神だから」
『てんまん……、なにそれ?』
テレビ画面から再び悟へ顔を向けた。リモコンを置き、箸休めの浅漬が無くなったのを確認したら私もキッチンに持っていけるようにと食卓上で食器を重ねる。
目の前の席の悟はよくぞ聞いてくれました!と目をやたらときらきらに輝かせていて。