第26章 だから師走というんです
いくら気分が良くて体が軽いと感じてもふらふらと重心はおかしくなってる。時々添えられた片手が失われつつあるバランスを補ってくれる。
……どこが悪いオオカミなんだろうね?そんなの自称で私には良いオオカミだって分かってるよ?
『ふーん?でも、部屋に現れるのって悪いオオカミじゃなくて、良いオオカミさんが、でしょう?結局食べちゃうから悪いオオカミになるのかもしれないけどさ?』
「あはっ、そこんところ良く分かってんじゃん。もちろん食べるよ?ぐっちゃぐちゃのとろっとろに蕩かせて、オオカミさんの事しか考えられないようにしちゃう」
それ、毎日の事じゃん。そう思ってふふっ、と溢れた笑み。ふらつく私を支えながらも悟と一緒に外へやって来て。
室内から外に来たら特に転ばないようにと気を遣い、そして寒くないようにって首元の素肌が晒されないようにマフラーを整えてくれる悟。
駐車場に向かいながら、腰を引き寄せるようにして支える彼を見上げて、おかしくって笑った。「なあに?」と不思議そうに悟は私を覗き込んでる。
『良心的なオオカミ、だよね、悟って』
「……もう。僕、飲みすぎて酔っ払ってるハルカの事、ちょっと怒ってるんだからね?」
少し頬を膨らませた悟。それを見て、片腕で首に引っ掛けてちゅっ、と口付けておいた。驚いたであろう口元も面白い。
『怒ってても食らいつかないもん、そういう白いオオカミさん、私は好きだよ?』
無言になって、片手で口元を押さえてる彼が珍しいなって。
そこからの記憶はまばら。夢の中みたいに朧げで外を歩き、マンションの部屋で寝支度したりして彼の胸の中でとても良い夢を見た記憶。
あれほど宣言したえっちはきっと、私が眠そうだったからか強制もしなくて、本当はしたかっただろうに私を考えているんだな、と思ったら愛おしく。
……翌朝、寝てる悟の頭をわしわしと撫で回したら、「朝っぱらからムツゴロウタイム止めて?」と私にもやり返されるハメになった。