第26章 だから師走というんです
学生たちがやや固まった島、虎杖達の居るテーブルにおそらくは手を着けられてない一升瓶が見える。なんでそこに私達の目からかいくぐったモンがあるのさっ!
『黒霧島!黒霧島があそこにあるよ!?』
「はいはいアル中はそこまでにしましょうねー」
『黒霧島ぁぁ!!……う、ぐずっ…酒、あるじゃねえか……
あー、うん…靴は履ける、自分で履けますんでそろそろ解放して?皆の視線が恥ずかしいんですけど?』
諦めるかぁ…と、帰る支度をしようって気分に切り替える私に対して、そっと解放した悟が疑うように腕を組みながら前傾姿勢で見てくる。
「そう言って~…這いつくばってでも黒霧島取りに行くつもりでしょ?」
『そこまでしねえよ??…もう、靴は、私自身で履きますって!』
悟が履かせようとした靴を手に取り、床に靴をぽん、と置いて少し体をよろけながらも履く。
たくさん食べて飲んだというのになんだか体が軽い。ふわふわして体がぽかぽかしてて気分がとても良い。
『身体が軽い…こんな気持ちの宴会なんて始めて……もう、何も怖くない』
「首取れる宣言してんの?オマエ」
少し呆れたような口元で笑う悟。いや、私マミさんの気分で言ったわけじゃないけどさ?『私がマミさんなら悟はキュウベェだね?』と言ったら「そこまで僕はいってないですが?」と否定された。
このまま後は帰ろう。いい気分でふんふんと鼻歌混じりに悟と並んで旅館の宴会場から外に向かってる。
……館内に漂う温泉のいい香り。やっぱり泊まるのも良かったな~!もしくは、休み中に悟とどこか温泉旅館に泊まったりするのもいいかも。
彼と一緒に過ごしたいな、と隣の悟を見上げると歯を見せながら喉で笑う悟。
『どったの?』
「んー?……こんなに飲んでちゃあ、部屋に現れる悪いオオカミに食べられてもおかしくないよね、オマエ。すっげえムボービ、危なっかしいね?」