第26章 だから師走というんです
公然でなんつー話してんだ、流石に引くわ。
周囲に女ばかり居るっていうのに悟はシラフ、傑は…ビールかな?アルコールを入れ始めてる。これはきっと悟から始めた話題、しかもシラフである彼の方が一番たちが悪いんですけどっ!
私のツッコミが聴こえてしまったのか、くるっ、とこちらを振り向く悟。満面の笑みがとても恐ろしく感じました、まる。
「ねーねー、オフトゥンで今年とオサラバしながら新年を一緒に迎えるのってどう?」
『ふーん、あっそ。携帯でも抱えてひとりでハッピーニューイヤーとか言ってな、私は実家で親父に親孝行でもしに帰ってるわ』
兄も帰ってくるだろうしね。
私が高専に来てから……というか、悟と結婚してしまってから父は家にひとりきり。久しぶりに帰ったあの日、確かに自炊は続けていたけれどおつまみ食のような夕飯だった。私も母もそんなに手の込んだ食事が得意ってわけじゃないけれどたまにはそういう、父親の負担を減らせる事をしたい。
年末に実家に行きたいな、くらいは言ってあるし悟も挨拶にいくとも言ってたしね。
こちらを向く、驚いた表情の悟。今年の終わりの夜からカウントダウンのちハッピーニューイヤー!ってえっちでもして過ごすスケジュールでも脳みそ内で展開していたらしい彼が口をあんぐりを開けてる。斜め前の方、歌姫がぶっ、と酒を吹き出してた。それをフォローする硝子、彼女がおしぼりや台拭きで周囲を拭いてる。
「なん、なんでまた実家帰るって言っちゃうのっ!?この前も怒って帰っちゃったしっ!そういうの良くないからねっ!」
「え、実家に帰るような事、君はやらかしたのか?」
「いや、ぜってえ傑にゃ教えねえよ!」
宴会場全体が騒がしいからこの席で騒いでも気に留められないんだけれど。結構な声量でふたりは騒いでた。
『声量、皆にだだ漏れですよ?実家に帰った事』
「ちょ、ハルカ~??」
ぐい、と透明な私の燃料を喉に流し込む。ッカー、いいね、ぽかぽかして気持ち良いし!
傑の悟への質問に回答を拒否する悟。傑はこっちを見てる。視線を感じてその方向をみれば硝子と歌姫。硝子の方は畳から机に布巾を乗せた所だった。
「で?何があったんだ?」
『私が本気で止めて、と言った事を止めずに強制したのでキレて帰りました』
「ミ゙ッ」