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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第26章 だから師走というんです


254.

乾杯!という声と共に始まった忘年会。始まる前の私達の周りの重い空気はどこへやら。
かんぱーい!とノリノリの声が私のすぐ隣で、そして遠くの虎杖だとか元気を持て余す人達が学長達に返して、各々のグラスを当て合う。室内のあちこちからカチン、とグラスの当たる音が疎らに聴こえてきた。

食前酒として洒落たグラスに梅酒が入ってるものもある。くい、と飲み干せば物足りなさを感じるけれど。ここはすぐにお酒に行くよりもご飯だご飯!と私が箸を持つと、目の前を箸を持つ男の片手が通り過ぎていく。そして手鞠を模した、一口サイズの饅頭が箸に挟まれて誘拐されていった。

『……おやあ?泥棒が近くに居るようですねえ?』
「ハルカ、ここに五条悟が座ってなかった?」
『私の目の前(隣の席)に居るやろがい…』

ふっ、と口元を釣り上げて笑う悟。箸に摘んだ饅頭を自身の口に入れてもぐもぐと動かしてる。
そして、咀嚼しながらに箸をからん、と置き、親指で悟自身を指してる。

「わひゃわおう、ほいふンがふはんは(馬鹿野郎、そいつがルパンだ!)」
『口ン中物入れて銭形すんなや、クオリティー激下がりなんですけど?』

私も何か食べようって箸を持っていた事もあり、まず隣の悟が自身の御膳よりも私のから手を出した事もあり、食べられたものは手付かずで。ここで隙あり!と悟のを取り返して食べても良いけれど大人げないしな…、と普通に自分の方に箸を向けますけど?

『……飲まないんだから、悟の食前酒頂戴』
「えっやだ。僕のものは僕のもの、オマエの物も僕のものだもん」

私の視線の先には、彼の御膳にある食前酒。もちろん、お酒が飲めない悟は口にする事をしてない。
その私の視線から隠すように、スッ…と彼が片手で覆ってへの字口で"やだ"って言ってる。飲まないでしょうに、飲んだって良いじゃんね~?

『ジャイアンめ、下戸がお酒の持ち腐れしないの!』
「ちぇー」

しぶしぶとグラスを持ち私の空のグラスを悟の御膳に乗せて交換が成立して。
……饅頭の件はこれでチャラにしよ。
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