第26章 だから師走というんです
「それだけじゃなくてね。受けた痛みを貼り付ける事も評価されていてね……フフフ…どこから漏れたのやら。高専内に留まらず、外にも情報が流れてるから裏では高額になり続けている。
その薄暗い界隈ではね、復讐だとか拷問だとか…そういうのにキミがどうしても欲しいって層も現れてる。私は金には興味が尽きないけれど、そういった事には興味が沸かなくてね…耳に挟んだからにはこの子に忠告だけはしておく」
私から悟に移された冥冥の視線。少し黙った後に引き寄せられた体が揺れる。悟が頷いたみたいでする、と腕から開放された。
すんなりと離したな……。
「忠告、ありがとね、冥さん。つまりは今まで以上に自由の域が狭まったって事ね……」
「さあ?どう捉えるかはご自由に?けれど、目を離さないようにしないと、リベルタ以上のやつらに奪われてしまうかもよ?………フフフ」
頭で理解が出来た。どうやらまた違ったジャンルからも狙われるようになってしまったって事。
……このままいったら私はどうなるんだろう?買い物でさえも危ないからって誰かと一緒でも外に出掛ける事さえも許されないんじゃないのかな…。
今年を忘れようとも忘れられない事を聞いてしまった。俯きたくも、俯いたってどうしようも無いことくらい分かってる。
──これは来年からの課題だな。
迫りくるピンチであるけれど、迷惑を掛けないようにしていこう、とゆっくりと静かになっていく宴会場でステージ上の東京・京都の学長達に視線を向けた。