第26章 だから師走というんです
なぁに、構って欲しいのだから反応すれば悪化するってモンで。部屋に帰ったら構ってあげるとして人前ではイチャコラしないわ!という事で右手で防衛戦をしながら配膳をするスタッフが一定間隔で置いていった、ビールや日本酒、烏龍茶やコーラ、オレンジジュースといった瓶の飲み物を確認してた。
目の前の人は何飲むのかな?雰囲気で判断するのはどうかと思うけど、お酒は飲みそうだな、とは思ってる。ちら、と目の前の女性を見ると怪しくも微笑む人。
「で、冥さんはハルカに何か聞きたい事でもあるワケ?」
私の右手に張り付くあったか大福餅が"冥さん"と呼んだ人がただただ、じっと見て真っ赤なルージュの口角を上げた。
「……一度間近で見てみたくてね、その子にさ?」
にこ、と微笑む彼女を見て、知り合いだろう悟を見る。今も構ってモードを拒絶中の掌の先の彼は、私を見て唇に弧を描いた。
「ハルカ。キミの目の前に座ってんのが冥冥。リベルタに攫われた時とかアジトの場所の特定やら強制的に籍入れられそうなタイミングを知らせてくれた、キミの恩人だよ?」
『……ほ?』
そう悟から聞いて驚いた。重要なポイントでの活躍した人じゃん!
驚く私を他所に、冥冥は悟にクスクスと笑いながら顔を向ける。背筋をピンとして、片手でその編み込まれた髪をするりと指先で触れて。
「強制的に籍を入れようとしたのはリベルタだけじゃなく、五条……キミもそうだろう?」
「ん、まーね!結果的に毎日この様に常にラブラブな夫婦……なんでキミ、こういう話してる時も近付けさせないようにしてんのかな~?」
言葉のタイミング的に来る、と感じて再び悟の頬を片手でぐいぐいと力を込めて押しておき。さっきは緩めの力だったけれど急に体重かけ始めたな、この人。
近付こうとする彼から防衛戦をしながらに目の前の席の冥冥と改めて向き合った。
『その節は大変お世話になりました……!』
「いいんだよ、私はそこのスポンサーから支払いがあって動いただけ、金が動いて当然さ。だって今のキミは裏では三億ものの価値になってるんだよ?」
その髪に触れてた手は指を三本立ててる。
えっ…さんおく……?三億とか年末ジャンボかな…??