第26章 だから師走というんです
歌姫他、靴を脱ぐために通路に溜まる人達。パーティー会場でも見たような女性やら猪野だとかどんどん集まってきた。
綺麗に遠くから座席はどんどん埋まっていく……。
こうも集まればいくら悟を避けようとも遠くから席は埋まっていくから私達の近くの席に座らざる負えない状況……悟からのストレス攻撃を避けきれないってわけで。
何も彼に言わずそのまま宴会場に来たのなら、本来であれば私達も後半に来てたんだろうけれど。遅刻する気満々な悟を引き摺って私が早めに現地にこうして来たって事で。
ストレスの照準を歌姫に向けていた悟は私へ標的を変え、口を尖らせブーブー文句を言ってる。
「下戸にまで強制飲ミニケーション押し付けるの僕良くないと思うよ?第一ね、僕が酔ったらとんでもない事になるんだからね?それ分かってて言ってるの?自己責任だよ?」
机を挟んだ目の前に何度か見たことがある、ロングヘアーを編み込んだものを前へと流した妖艶な女性が座る。片目が見え、その流し目とルージュが随分と色っぽい女性。その隣…、悟から離れた私から斜め前に遠くが埋まっていた為か硝子、更に奥に歌姫と座っていた。悟の隣は誰も来ない、傑用かな……?
……ああ、そういえば傑が来てないような。
きょろきょろと宴会場内と通路を確認しても傑の姿は見なかった。そろそろ始まる時間なのに…年末だし忙しいのかな。
「ねえ、聞いてる?」
さっきの文句モードの悟がまだなんか言ってたようで、どうせ酔ったらセクハラモードに変わるとか言ってたんだろうな、と適当に相槌を打っとく。
『ンー聞いてる聞いてる、それは面白かったねー』
「あっこのー、このこの~!…全然聞いてねえや!」
構ってムーブの発動を予測して、すぐに右隣に居る悟を警戒する。寄ってきた瞬間に手で押さえ、ぐい、と押すと頬でぐりぐりと近付こうとしているのを突っぱねた。あしょんでモードの白ポメか?今は遊んでる気分じゃないんだけれど。人前だしさ?
視線を着物を着たスタッフがお盆に乗せた物にと移る。幾つかのボトル。待ってました!日本酒だっ!
『おー、日本酒キタコレ、勝つる勝つる』
「ノールックで僕を拒否らないでくれるかな?無限バリア(物理)は悟クン、悲しいぞ~?」