第4章 乱心、暴走
「二日酔いしてるだろ?」
『起床時から脳内、フェス会場ですよー…今はメタリカがガンガンに演奏中です』
「ハルカはたまに五条みたいな事を言うな」
その人名を聞いてぴくり、と反応すると、「あ」と家入は頭を掻いた。
私はへへ、と話を変えるために必死で話題を探す。ああ、そうだ。
私は部屋での事を思い出して、自身の頭に両手をあてて術式を起動する。
『流石に術式で二日酔いは……、治んないですね』
ははっ、と短く笑い手刀をポクッ、と当てる家入。
ふと感覚的に何かを閃いたような気がした。そう、買い物中に台所のキッチンペーパーなかったんじゃね?というような、些細な感覚。
「二日酔い程度に勿体ないものを使うな……ん?」
手刀の際にズレて空いた隙間…、左右の頭と手から何かがボトッ…ボド……と落ちる、というか垂れ下がる。それがなんなのか確認出来ない、家入を私は見続けた。
ポカンとする私と家入。
私は最悪の事態が脳裏を過り、頭の血液がサアー…と引いた。
『ああああのあのあのあの家入さん!?私脳みそとかでで出てないですかっ!?』
怖くて下が見られない。なので正面の家入に涙目で訴えるしかない。
ぬるんっ、と出てきたため、手の平で感じるうねりがもう脳みそなんじゃないかと、これ以上下を向いたら溢れてしまうと動きを出さずに体を硬直した。なんかの術式を発動したっぽい、頭蓋骨割ってそこから出てるんじゃないの?これ…。痛みとか特に無いけれど、脳は痛覚が無いというし……っ!
家入はポケットから携帯を取り出して電話をしている。
「……五条?ハルカ待ち?そう?……今彼女医務室に居るんだけれど至急来れる?……切るよ。
今から来るって。その状態で待ってられる?待ってたら二日酔いに効く飲み物あげるからな」
『わっ…私、相当ヤバいです??』
「言い忘れたが脳が出てるわけじゃない」
あ、そうなのか。と少し安心して足元をようやく見る。
それは白銀の縄。顔の真横を見て太さはおおよそ3センチ程というか。それが軽く撚り合って重力のままに床に落ち、床で自然に落ちたのか8の字を描いている。
ガラ、と開けられたドアから悟がやって来た。アイマスクをしている。昨日の晩、玄関前で固まっていたのぶりだけれど今までうっとおしいほどに側に居たせいか(朝も布団にも入ってなかったし)少し久しぶりな気もする。