第26章 だから師走というんです
変わらない速度で刻む音。そんな確認をしていたら頭上から声が掛かる。薄ら笑いを入れた怒った風な口調で。
「もー、なにやってんの!」
『……チッ、これくらいじゃ駄目かあ、』
「やり返しちゃうからね?」という言葉の合図と共に、ベッドの上で朝から攻防が始まる。頬をぐい、と押してキスを避けながら心音を聴く私に、片手が背骨沿いにすぅ…と指先でなぞる動きに慌てる私。胸に顔を埋めようとしてきた所で額を押して止めさせて…、とばたばたと暴れながら、朝からベッドの上でけらけらとしばらく笑いあった。
多分五分とも掛かってない揉み合いが終わるとベッドにふたり並んで腰掛ける。お互いにローブが脱げかかって、急いで整える私の横で豪快にも胸筋も腹筋も御開帳の悟。ちら、と下半身を見た所、悟の悟君は眠れる獅子のようで今は休憩中だった。
「来年になったら、一回五条家に挨拶に行かないとねー…、面倒くさいけど。一応、うちの親にもハルカを見せないと」
物凄く面倒くさそうな態度。片手でがしがしとボサボサの頭を掻いてる(でもこの髪、サッサッサーってやれば寝癖知らずです…)
本来であれば今年身内の不幸があったのならば、新年を迎えるのは大変慎ましやかにすべきであるのが一般的。けれども私の一族っていうのは死んで次の世代の力になるという、残りの一族への呪いの手助けをするという事…、つまりは不幸というよりも幸福であると手記で見ていた。人を呪いながら自分を呪っているようにやっぱりそういう所も反転していて、こういう面もやっぱりズレているな…と感じる。
かといって祖母を想いながら過ごすのかというと祖母に対して私自身が愛情を持つ訳でもないし、慎ましやかにする彼でもなく。私も祖母に会う機会も少なかった為に思い出もなく。普通に目出度い正月を迎える気でこうして過ごしてる。
私の両親、生きてる父や死んでる母にも挨拶を済ませている悟。
悟のご両親は今まで、そのうち、いつか、後で…って先回しにされ続けてた。呪術界の御三家となれば私のような家の出身は厳しいんだろうな…。
私との結婚を反対されるんだろうな……。私はそのように想像している。