第26章 だから師走というんです
「おっ、さんきゅー」そう言って悟もスッ、と片手で携帯を出して確認してる。ただ作ってすぐ冷蔵庫にしまうのはもったいない。でも食べきれない。第一、このまま冷蔵庫に入れたとして明日崩れてる場合もあるし、なら少しだけでも食べておこうって。
切り分けて誰かに分けるんじゃないし。フォークを出して豪快にずぷ、とホールケーキの角をひとすくいして。
出来たてのケーキを食べよう、と悟を見上げると生暖かい目をしてる悟。
「随分豪快だねえ、キミは海賊かい?ドーラ?」
『褒めるな褒めるな、てかドーラは空賊だろ、せめてワンピースで来な~?
……ほら、口開けて。一口くらいは食べてあとは明日食べよう。明日の負担をちょっとだけでも減らすよ』
一口分のものを悟に向けると迷いなく口を開ける。そのままかぷ、と口に入れてフォークの上にあったケーキは綺麗に無くなった。
もぐもぐと口を動かす悟は、私自身がフォークで自分の分を食べようとしていたのを手で制止し、フォークを取っていく。代わりに悟がホールケーキのど真ん中にずぶっ、と同じく豪快にひとすくいして私に笑いながらそれを向けた。
「ほら、オマエもあーん、して。結婚式の予行練習」
『……んあー、』
口を開けた所に挿し込まれ、そのまま口を閉じた所で引き抜かれていくフォーク。さっき互いにプロの味を楽しんだ後の手作りじゃ味は既製品の組み合わせなんだけれど。クリームとかちょっと生ぬるいし。でもただの甘ったるいだけじゃない甘さを感じる。むず痒いような何か。
『……ふふ、これ悟好みの甘さだね~』
みかんと苺の破片がみずみずしくてちょっと甘さをリセットしてもさ?
にこにこ笑う悟は何かに気付いて、更に側に近付く。
『どしたの?ゴミでも着いてた?』
「……ククッ、オマエの首んとこまで僕がやらかしたクリーム飛んでんだけど?ちょっと待ってね、」