第26章 だから師走というんです
「団地みたいな所とか隣にならず者が居るかも知れないそこらのマンションよりはこういったところの方が安心でしょ?地上から結構上だし呪いも少なめの場所だし。最悪呪いを寄せても低級に関してはオマエでも大丈夫だって判断してるし……」
口を尖らせてブーブー言う彼からちら、と冷蔵庫を見た。
色々と重い、悟からのクリスマスプレゼント。ただ部屋を用意するだけじゃなくて、家具もすぐに住めるようにして。寮からわざわざ物を運んでまでこの日の為に用意してる。結構な時間を掛けて用意してくれた、彼なりの私が喜ぶだろうってプレゼントなんだ。
気を取り直してもう一度悟を見上げた。さっきのようなびっくりして感情迷子のチベットスナギツネじゃなくて、今度こそ笑顔で。
『でも。ありがと。クリスマスプレゼントっていうには想定外過ぎてびっくりしちゃった』
「ふふっ、喜んでもらえて光栄、光栄」
にかっ!と無邪気に笑う彼は私の手を引っ張る。少し体勢を崩した私を一度支え、そのまま「部屋内をご案内しまーす!」と連れて行かれる。
廊下はもちろん、リビング、キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所、化粧室、物置、ウォークインクローゼット……空いた部屋もいくつか。
『空いた部屋結構多いねー、ここについてはレイアウト決まってない感じ?これから客室にしてくとか?』
あとは趣味の部屋とか。寮から撤退する荷物もある、確か大量の服とかさ。
彼は目をぱちくりして微笑んだ。
「とりあえずすぐには使わないけど。最低三つは確保しとこうってね、子供部屋」
『こどもべや…』
うわ、サッカー選手養成施設でしたか。
口の中をきゅっと噛んで本格的に作ろうと奮闘する悟を見上げれば当たり前って顔してる。今夜はクリスマス・イヴ。このどこかの部屋の主を作ろうとしてくるに違いない。
「後々になって一軒家作っても良いしねー。
あっ…こっちは寝室でーす、ほらほら、足を止めないでスムーズに行くよー」
……先を考えすぎておっかねえ。
大きなベッドのある部屋で収納もあるよ、とマシンガントークでこの部屋のアピールしていく悟。上の方の戸棚をかぱ、と開けると信じられないものがずらーっと並んでいた。