第26章 だから師走というんです
『そういうこれからの事、もう決まってんの…?』
「うん。大体はね。
主に治療。硝子の非番にハルカが担当する。一部の呪いによるものは治せない(解呪不可)から硝子に来てもらうようになるけど、他に結構慣れてきてるだろう事務。そしてたまーに任務。
つっても絶対に信用あるヤツとじゃないと駄目!って言ってあるから少なくとも知った顔のメンツと行くかも」
キッチン前のテーブルの上に、悟が買ってきた袋を置く。
彼は大きな冷蔵庫を開けてケーキをしまおうとしたのだけれど私は見てしまった。今朝見たハズのケーキの材料が何故かここにあるんですけど…。市販されてるスポンジケーキ、苺のパックとか…。
『あっ、』と言葉を漏らしながら思わず指を指していた所を振り向く悟は冷蔵庫の中を見て私を見て。ノールックで冷蔵庫のドアをパタン、と締める。
「あ、これらも本日、任務ソッコー終わらせて運んできました~!僕ってばなんでも出来ちゃうスパダリだから、家具はもちろんちょっと賞味期限長い食料とか、歯ブラシとかの日常品、そういったものも取り揃えてるから。今日から住めるよ!」
『プレゼントの域を越えてるっ!マフラーが霞むわっ!』
目に見えないもの・目に見えるものとかそういうレベルじゃない。目に入るもの全てがプレゼントでしたってオチ。あれ、プレゼントってなんだっけ??
えっへー!と無邪気に笑う悟は手洗いを始めていて、私も外から帰ってきたのだし…いや、入ってきたのだし?釣られて追うように手洗いうがいを一緒に済ませた。
もう一度自信満々の悟は腰に手を当てながら少し胸を反らしている。
「ふふん……どう?僕のクリスマスプレゼントは。ハルカのお気に召したかな?」
嬉しいか嬉しくないかで言えば嬉しいけどさー…。
例えば、一箱のちょっと奮発したチョコレートをバレンタインに上げたら店舗に陳列するゴディバをここからここまで全部、みたいな事をされたようなもんで思考停止もしかねない。嬉しいの域を越えて感情、絶賛迷子中。
『……嬉しいっちゃ嬉しいけど重いわ…』
「えー?重い?新築で三階建くらいの家とか考えたけれどこっちの方が手軽じゃない?もー、わがままなんだから~……」