第26章 だから師走というんです
──考えが逸れたけど。
人と少しズレてるこの人がプレゼントをするっていうんだ。想像がつかない。どういった物なんだろう?クリスマスだからケーキっていうのは無いだろうし(引き取るケーキと部屋で作るケーキがあるし流石に自身にもケーキの四面楚歌で苦しむ事は選ばないと思う)キザに花束ってこととか。ありそう、目覚めた時のベッドサイドにあったし。車とか。なんか高いものをぽーん、とリボンつきのいかにもなプレゼントボックスで渡してきそうな所もあるし。
……裏をかいて、変態的な下着とかサンタコスとかプレゼントの可能性が高いと思ってるんだけれど。
その性の6時間に使用するアイテムである可能性を切り捨てたく、彼の顔を覗き込みながらヒントを貰う。
『……まともなもの、ですか?』
「オマエ、僕をなんだと思ってるの。至極マトモなものでーす、きっと気に入るよ?」
『まとも、ねー…』
にこにこと嬉しそうな悟。えっ想像がつかない。
なんだろう…と車?とかペット?とかお酒では?と聞いては悟はノ「ノーコメント!」を貫き、目的であるケーキを引き取る順番がやって来る。そのケーキの入った箱を柄の入ったビニール袋に入れて。それを悟が持って歩いて遠くからでも見える大きなツリーや周囲のイルミネーションのある広場へと足を進めた。
近付く程にあちこちからの歓声。空からふわふわと雪が舞ってる。イルミネーションと合わされば幻想的にも見える。
ああ、ホワイトクリスマスだ…!
「……綺麗だねー…」
『うん……』
死んでたら、大切な人とのこの時間を味わえなかった。
ぎゅっと、離れたくなくてポケットの中の手をしっかりと握る。このひとときを忘れたくない。
『私、生きてて良かった。死んでたら悟とチキンを食べたりケーキを部屋で作って食べたり…寒いけど今、こうやってイルミネーションを見ることも、雪が降る光景も一緒に経験出来なかった』
「……うん、そうだね」
人工的な幻想と空からの贈り物から、視線を直ぐ側の大切な人へ向けた。少しだけ視界が滲むのは悲しいんじゃなくて嬉しくて。