第2章 視界から呪いへの鎹
なんだか分からないけれど、食事のお誘いだった。
少し考えても、別に用事は無いけれど。うーん、名前と連絡先は知ってるから行っても良いのかなぁ。
『何を気になって居るんです?』
「キミについてというか…気になるなら詳細は食事のときにでも?」
『だったら、わざわざ私を探してまで誘わなくっても……って、』
連絡先を教えてなかったのか、と業務用のメモ帳を取り出して書き出す。
私の名前と連絡先だ。それをぴっ、と切り取って悟に渡した。
『仕事終わったら連絡するけれど、事情によってはご飯行けなくなるかも』
私の渡したメモを人差し指と中指で挟んで持ち上げ、サングラスの隙間から覗き込んでいる悟。
……隙間から見える瞳は宝石の様な綺麗なスカイブルー。
ハーフとかかも知れない、髪白いし、目も…。
ガガ…ッ、と店内放送にノイズが入った。誰かをスタッフが呼ぶ前兆だと知っている私は目の前の男よりも天井側に視線を。そして"レジ応援をお願いします"の放送。
私が行こう、と立ち上がったら悟も立ち上がった。
「まあ、連絡頂戴、待ってるからさ。あとこれ、疲れたら甘いものだよね、あとで食べてよ、」
制服のポケットに個装紙のお菓子をひとつ突っ込んで、悟は去っていく。なんだか餌付けされた。
昨日から本当に私につきまとってなんなんだろう……。レジ方向へと走り出しながら、考えても私の中に答えなんて存在しなかった。
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『お疲れ様でしたー!』
制服を着替え終えて、裏口から出る。数歩、歩きながらスマホを取り出した。
しかし、なんで私なんかに話を聞きたいんだろう……あっ、もしかして何日前に誰々を見た?とか警察の取り調べみたいなやつかな?でもあの人自称教師じゃん…、とスクロールした連絡先から五条悟という名前を指先で押した。プップップ、という音の後にコール音が2度。そして…。
『もしもし、ハルカですけど、』
「あっ終わった?お疲れサマンサ!」
『……はい、電話切ります』