第26章 だから師走というんです
子供みたいに楽しそうな様子にこっちにもその楽しいって気持ちが移る。私も悟が楽しいなら楽しいし。
『ふふ、悟と一緒なら私も安心出来るよ。あー、いい匂いさっきからするんだけど!チッキン♪チッキン♪』
私からもにぎにぎと悟の手を数度握り返す。やっぱりこの香りを嗅いだら食べたくなるなる、だよ。うん、ケンタッキーは良いよね。普段であればビールがイケるけど、やっぱり今夜は特別だからビールは封印かなー。
悟は少し呆れたように、はは…、と笑った後に「ご機嫌だねえ……」と私をじっと見てる。その視線に応えるように『そりゃあクリスマスっていったらチキンでしょ?』と至極当然の答えを言い放った。もう、クリスマスの商売に乗せられてるぞ?と言われようがなんだろうが、食べたいものは食べたい。今日という日は全国の鶏の受難の日だろうけどしっかりとお腹に収めたい所。
『今の私はチキンが食べたい口なんだよねー…ふふん、食べたくなるなるケンタッキー、だよ?アンダスタン?』
「……」
なんかすっげぇ微妙な顔してんなあ…。
この表情を読み取るにどうせチキン+酒で優勝なんだろ?くらいは思ってそう。それも良いけど普通に食べたい時だってあるんだよ、私にだって!たまにね!今はチキンを食べたのちにお酒!くらいには思っていますけどっ!
受け取るのは箱だけど、頭の中にバーレルを想像しながら、チキンチキン♪と小さく口ずさみ、列が進んだ数歩前へと進む。パックに付いてるビスケットも、サラダも…ポテトも。最高なんだよね。今回は頼んでないけれどバーガーも美味しい。
彼の言う通りとても機嫌が良い状態の私に隣で「フ、フフッ……、」という笑う声。
何わろてんねん、と悟の方を見上げると丁度悟が少し頭を下げ、私へと傾けた瞬間だった。